おとり広告の通報先はどこ?消費者庁などの窓口と通報後の流れを解説
おとり広告について調べている広告担当者の中には、自社の広告がおとり広告に該当しないか不安に感じる方や、他社の疑わしい広告を見かけて通報先が分からず困っている方もいるのではないでしょうか。
おとり広告は消費者からの信頼を損なうだけでなく、行政処分の対象にもなり得る重要な問題です。近年はポータルサイトの掲載件数が増え、更新漏れなどによる意図しないおとり広告のリスクも高まっています。
本コラムでは、おとり広告の通報を受け付けている窓口や通報の方法、通報後にどのような調査・措置が行われるのかを整理して解説します。
1.おとり広告とは何か、通報の対象になるケース
まずは、おとり広告の定義と、通報の対象になり得るケースを確認します。通報する側になった場合にも、また通報される側にならないためにもどのような広告が通報の対象になるか理解しておくことが必要です。
おとり広告の定義
おとり広告とは、実際には取引できない商品やサービスを表示している広告のことです。
不動産では、「存在しない物件」「存在するが実際には取引対象になり得ない物件」「存在するが取引する意思がない物件」の表示が該当します。魅力的な条件で顧客を集めながら、実際には別の物件を案内する目的で使われるケースもあり、意図的でなくとも、表示内容と実態にずれがあれば該当し得る点に注意が必要です。
通報の対象を判断する際の根拠法
おとり広告は、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)が定める不当表示のほか、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)や、不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(以下、表示規約)によっても規制されています。複数のルールが重なって適用される点が特徴で、どの法律・規約に基づいて通報されるかによって、その後の調査を担当する機関も異なります。
通報が行われる典型的な場面
成約済みの物件がWebサイトやチラシに掲載され続けているケースや、実際には案内できない好条件の物件を広告に使っているケースなどで、消費者や競合他社から通報が行われることがあります。
特にポータルサイトなど掲載件数が多い媒体では、更新漏れが疑われやすい傾向にあります。実際に問い合わせをした顧客が「その物件はもう成約済みだった」と気づき、消費者庁や不動産公正取引協議会に情報提供をするケースも典型的なパターンの一つです。
2.おとり広告を通報できる窓口
おとり広告を通報できる窓口は、主に4つに分けられます。
消費者庁の情報提供フォーム
消費者庁は、景品表示法違反が疑われる表示について、Webサイト上の情報提供フォームから通報を受け付けています。フォームには広告の内容や気づいた経緯などを入力する形式になっており、事業者名や媒体名、URLなどをあわせて記入する項目が用意されています。
公正取引委員会・都道府県の窓口
公正取引委員会や、各都道府県の消費生活センター等でも、不当表示に関する相談・情報提供を受け付けています。
消費生活センター等は、地域によって窓口の名称や受付方法が異なる場合があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。電話やWebフォームなど、複数の受付手段が用意されている窓口もあり、消費生活センターは消費者からの身近な相談窓口として広く利用されています。
不動産業界独自の窓口=不動産公正取引協議会
不動産業界には、表示規約の運用を担う不動産公正取引協議会(以下、協議会)という業界独自の窓口があります。全国各地に地域ごとの協議会が置かれており、業界の実情に詳しい窓口である点が特徴です。
掲載媒体(ポータルサイト)の通報窓口
不動産情報サイトの多くには、成約済み物件の掲載や表示内容に関する専用の問い合わせ・通報窓口が用意されています。広告を見かけた媒体に直接連絡することで、早期の是正につながりやすいという特徴があります。
3.通報の方法と必要な証拠
通報を行う際は、事前に情報を整理しておくとスムーズです。準備が不十分なまま通報すると、調査機関側での確認に時間がかかってしまう場合もあります。
通報時に準備しておきたい情報
通報の際は、広告を掲載している事業者名、媒体名やURL、掲載日、疑わしいと感じた表示内容を具体的に整理しておくことが望ましいでしょう。情報が具体的であるほど、その後の調査が進めやすくなります。問い合わせを行い、実際に案内された物件が広告と異なっていた場合は、そのやり取りの経緯も記録しておくと有力な情報になります。
証拠の残し方
広告は掲載後に修正・削除される場合があるため、Webページのスクリーンショットや、チラシ・紙面広告の写真など、証拠となる資料を残しておくことが重要です。日付が分かる形で保存しておくと、より確実な記録になり、後から広告内容が変更された場合の比較材料としても役立ちます。
匿名での情報提供
消費者庁や協議会への情報提供は、匿名で行うことも可能です。ただし、詳しい調査につなげるためには、可能な範囲で具体的な情報を添えることが望ましいでしょう。連絡先を伝えておくと、確認のための問い合わせを受けられる場合もあり、より詳細な調査につながりやすくなります。
4.通報を受けた後の調査・措置の流れ
通報後にどのような流れで調査・措置が進むのか、大まかな流れを整理します。通報してすぐに結果が分かるものではなく、一定の手続きを経て判断が行われる点も押さえておきましょう。
調査の開始
通報を受けた消費者庁や協議会は、必要に応じて事業者への事実確認や資料提出の依頼を行い、表示内容の調査を進めるとされています。調査には一定の期間を要する場合があり、その間に広告の修正・取り下げを求められることもあります。
措置命令と課徴金
調査の結果、不当表示に該当すると判断された場合は、再発防止を求める措置命令の対象となります。
おとり広告は景品表示法上の指定告示に基づく不当表示にあたり、課徴金納付命令や直罰規定の対象となるのは、価格等について誤認させる有利誤認表示など別の類型に限られるとされており、おとり広告のみを理由に課徴金や刑事罰が科されるわけではありません。ただし、同じ広告に価格面での有利誤認表示が併存する場合は、その部分について課徴金納付命令等の対象となる場合があるとされています。
宅建業法・表示規約による措置
景品表示法上の措置に加えて、宅建業法違反に該当する場合は指示処分や業務停止処分の対象となることがあり、表示規約違反については協議会からの指導・警告といった措置が講じられる場合があります。
複数の措置が同時に検討されることもあり、行政処分の内容によっては会社名が公表される場合もあるとされています。
5.自社が通報される側にならないための備え
おとり広告の定義や原因、一般的な防止策については既存コラム「【不動産事業者向け】おとり広告とは?該当ケース・罰則・防止策を解説」で詳しく解説していますので、ここでは通報されるリスクを避けるための備えに絞って紹介します。
日頃からの広告点検
月次・週次など定期的なタイミングで、掲載中の広告に成約済み物件や条件が変わった物件が含まれていないかを点検する仕組みを設けておくことが有効です。担当者任せにせず、チェック担当を明確に決めておくことも重要で、点検の頻度や手順を自社内のルールとして明文化しておくと、担当者が変わっても運用を続けやすくなります。
成約済み物件の削除フロー
物件が成約した際に、担当者から広告管理者へ速やかに連絡し、Webサイトや広告媒体から削除・非表示にするまでの自社内フローをあらかじめ決めておきましょう。連絡の抜け漏れを防ぐ仕組みづくりが鍵になり、複数の媒体に掲載している場合は、各媒体の担当窓口も一覧化しておくと対応漏れを防ぎやすくなります。
疑わしい表現の事前チェック
「好条件」「今だけ」といった表現を使う場合は、実際に取引可能な物件であるかを公開前に確認する体制を整えることが望ましいでしょう。担当者の思い込みだけで判断せず、複数人でダブルチェックする仕組みも有効です。また、外部の広告チェックサービスを活用することもおすすめです。
6.まとめ
おとり広告は、実際には取引できない物件を表示した広告を指し、景品表示法・宅建業法・表示規約など複数のルールで規制されています。疑わしい広告を見かけた場合は、掲載媒体の窓口や消費者庁、不動産公正取引協議会などに通報が可能で、通報後は事実確認を経て措置命令等の対象となる場合があるとされています。
通報は自社を守るためだけでなく、消費者や業界全体の信頼を守るための仕組みでもあります。自社が通報される側にならないためにも、成約済み物件の削除フローや広告表示の事前チェック体制を日頃から整えておくことが大切です。