不動産広告の「おとり広告(釣り広告)」とは?該当ケース・原因・防止策を解説

公開:2026年1月
不動産広告の「おとり広告(釣り広告)」とは?該当ケース・原因・防止策を解説
SHINWA'S PICKS編集部

不動産広告における「おとり広告(釣り広告)」は、業界全体で問題視されている課題です。意図しない更新漏れなどが原因で生じることもあり、一度発覚すれば企業の信頼を損なう恐れがあります。

本記事では、おとり広告に該当する具体的なケースや罰則、発生する原因を整理し、組織で取り組める防止策まで、広告担当者が押さえておきたいポイントを解説します。

1.不動産のおとり広告(釣り広告)の定義と罰則

不動産のおとり広告(釣り広告)は、依然として不動産業界が向き合うべき課題の一つとされています。

例えば、(公社)首都圏不動産公正取引協議会が2025年10月に公表したインターネット賃貸広告の一斉調査報告(第14回)によると、大手不動産情報サイトを調査した結果、対象となった不動産事業者の16.4%で、おとり広告に該当する表示が認められました。おとり広告は、意図しない違反を含め一定数みられますが、発覚した場合には厳しい罰則の対象となり得ます。

広告担当者にとって、その定義とリスクを正確に理解することは、事業の根幹を守る上で不可欠です。ここでは、おとり広告と判断される表示の類型、関連法規、そして罰則や事業への具体的な影響について解説します。

おとり広告と判断される3つの表示

おとり広告と判断される表示は、主に次の3つに分類されます。いずれも実際には取引できない物件を使って顧客を不当に誘引するものです。

1つ目は、実際には存在しない架空の物件を掲載する表示。

2つ目は、成約済みなどで実際には取引できない物件を掲載し続ける表示。

3つ目は、物件は存在するものの、実際には取引する意思がない物件の表示です。

これらは事業者の意図にかかわらず、おとり広告と判断される可能性があるため、細心の注意が求められます。

宅地建物取引業法と不当景品類及び不当表示防止法

おとり広告は主に「宅地建物取引業法(宅建業法)」と「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の2つで規制されています。

宅建業法第32条では誇大広告などが禁止されており、違反した場合は6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。

一方、景品表示法第5条では不当な表示が禁止されており、違反した事業者には再発防止を求める「措置命令」が出されます。

さらに、2024年10月1日からは、令和5年改正景品表示法において「直罰規定」が新設されました。事業者が故意に、実際よりも著しく良いと見せかける表示や有利な取引条件と誤認させる表示を行った場合、措置命令を経ずに直接100万円以下の罰金が科される規定です。

不動産の表示に関する公正競争規約

法律による規制に加え、業界の自主規則ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」の理解も重要です。

この規約は、不動産公正取引協議会連合会が景品表示法に基づき運用しており、所在地や価格、取引条件などの表示基準を定めています。

違反が認められた場合は警告のほか、最大500万円以下の違約金や協議会からの除名といった処分を受けることがあります。

事業存続に関わる行政処分

宅建業法違反では、罰則に加え、免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)による行政処分を受けることがあります。

処分内容は、業務改善を求める「指示処分」、一定期間の営業を禁じる「業務停止処分」、最も重い「免許取消処分」などです。

特に後者2つは、企業の収益基盤と社会的信用を根元から揺るがす重大なリスクとなります。

2.不動産広告でおとり広告が発生する原因と背景

おとり広告の背景には、集客目的の故意によるものだけでなく、業務上の過失や体制の不備など、意図しない原因も多く存在します。

これは不動産広告特有の構造的課題に起因するものであり、その原因を正しく理解することが、効果的な再発防止策の第一歩となります。

成約済み物件の更新漏れ

成約済み物件の更新漏れは、おとり広告の主要な原因の一つです。

物件の申し込みや契約情報が広告担当者へ即時に共有されず、広告媒体で掲載が継続されてしまうケースがあります。

この情報更新の遅れが、意図せずおとり広告を発生させる大きな原因となっています。

情報共有体制の不備

組織内の情報共有体制が整っていないことも、おとり広告の発生につながります。

営業担当者が把握した成約情報が、広告担当者または広告管理の責任者に適切に伝わらないケースは少なくありません。

情報連携の仕組みが確立されず担当者の裁量に依存している組織ほど、広告内容の正確性を維持することが難しくなります。

競争激化と人手不足

不動産広告の競争激化と慢性的な人手不足も、違反発生の背景原因です。

反響を得やすい物件を少しでも長く掲載したいという思いが、更新の遅れを招くことがあります。

さらに、広告管理に十分なリソースを割けない企業では、チェック体制が不十分になり、違反リスクが高まる傾向があります。

3.おとり広告の具体的な防止策

おとり広告を防止するためには、発生原因の多くが自社内の業務プロセスや体制に起因している点を踏まえ、組織的な見直しが重要です。

ヒューマンエラーを減らす仕組みの構築やテクノロジーの活用、そして顧客視点での広告チェックを組み合わせることで、違反リスクを大幅に抑制できます。

さらに、自社内の取り組みだけでは不安な場合、不動産の表示規約に詳しい弁護士や広告代理店など、外部の専門家による広告チェックを受けることも有効な手段です。

仕組みで防ぐヒューマンエラー

ヒューマンエラーを防ぐには、個人の注意力に依存せず、組織として誤りを防ぐ仕組みを整えることが重要です。

広告管理の責任者や最終承認者を明確にし、確認の流れをルール化することで、判断の属人化を防げます。

入稿や更新の際には複数名で内容を確認するダブルチェック体制を導入し、誤記や更新漏れを未然に防止します。

さらに、関連法規や社内ルールに関する研修を定期的に行い、担当者全員が最新の知識を共有できる体制を維持することが大切です。

システムによる広告の効率化

システム連携による広告管理の効率化は、人的リソース不足に悩む事業者にとって有効な対策です。

物件管理システムと各不動産情報サイトを連携させれば、物件の状況変化を迅速に反映でき、更新漏れのリスクを大幅に軽減できます。

さらに、広告表示の自動チェック機能を備えたツールを導入すれば、規約違反の可能性がある表現を自動検知し、担当者に警告することも可能です。

顧客視点での広告セルフチェック

顧客視点で広告内容のセルフチェックを定期的に行うことも、有効な防止策です。

自社内の視点だけでは広告の問題点に気づきにくい場合があるため、第三者の立場に立った検証が欠かせません。

例えば、家賃や価格が周辺相場と比べて不自然に安すぎないか、住所や写真に不審な点がないかなどを確認します。

このプロセスは、おとり広告の防止に加え、顧客にとって分かりやすく魅力的な広告づくりにもつながります。

外部専門家によるコンプライアンスチェック

自社内での対策を徹底しても、慣れや思い込みによるリスクの見落としを完全に防ぐことは困難です。

また、関連法規や掲載基準の改正に常に対応し続けるためには、専門的な知識と最新情報のキャッチアップが欠かせません。

そのため、不動産広告コンプライアンスを専門とする外部のチェックサービスや監査機関を活用することも有効です。

第三者の客観的な視点で広告を網羅的に点検することで、自社では気づきにくい潜在的なリスクを洗い出し、広告の信頼性と透明性をより高めることができます。

4.おとり広告対策は、信頼を築くマーケティング活動

おとり広告への対策は、単なるリスク回避ではなく、顧客との信頼関係を育てる積極的なマーケティング活動です。

コンプライアンスを遵守する誠実な姿勢は、競争の激しい市場において自社ブランドを差別化し、長期的な成長の基盤となります。

正確な情報で「反響の質」向上

正確な情報発信は、問い合わせ件数の増加だけでなく、成約につながる質の高い反響を生み出します。

虚偽や誇張を含む広告で集客した場合、顧客は事実を知った時点で不信感を抱き、成約率の低下やクレーム対応コストの増大を招く恐れがあります。

一方、誠実で正確な広告は条件に合う顧客からの問い合わせを呼び込み、成約率と営業効率の双方を高める効果が期待できます。

ブランド価値の維持・向上

おとり広告を排除することは、企業の信頼性とブランド価値を守る基本施策です。

1件の虚偽表示でも企業全体の信頼を失い、ブランドイメージを大きく損なう恐れがあります。

失った信頼を回復するには多大な時間とコストを要するため、日頃から誠実な広告活動を徹底することが、ブランドの持続的な価値向上につながります。

専門家と連携したSNS炎上対策

不適切な広告表示はSNSを通じて瞬時に拡散し、企業の評判を損なう「炎上」につながることがあります。

こうしたリスクに備えるには、SNSマーケティングや広報リスク管理に精通した外部専門家との連携が有効です。

自社だけでの対応に不安がある場合は、日常的に炎上対策の知見を持つパートナーと協力し、早期発見と迅速対応の体制を整えておくと良いでしょう。

5.まとめ

不動産広告のおとり広告(釣り広告)は、意図しない更新漏れなどでも発生し、企業の信頼を大きく損なう可能性があります。その原因は、情報共有体制の不備といった組織内部の課題であることが少なくありません。

おとり広告を防止するには、ダブルチェック体制の構築や広告管理システムの活用といった具体的な対策が有効です。これらの取り組みは、コンプライアンス違反のリスクを回避するだけでなく、顧客からの信頼を獲得し、質の高い反響を得るための基盤となります。また、必要に応じて外部の専門家の知見を取り入れることも、確実な対策を進める上で有効な選択肢です。

誠実な広告活動を継続することは、企業のブランド価値を守り、持続的な成長を実現するための重要な経営課題といえるでしょう。