【一覧表付き】不動産広告で守るべき表示義務を分かりやすく解説

公開:2025年5月
不動産広告の表示義務一覧解説
SHINWA'S PICKS編集部

不動産業界では厳格な規制が設けられており、広告表示においても細かなルールが適用されます。規約や法令に違反すると注意、警告、違約金課徴の処分対象となり、事業者名が公表されることもあるため、細心の注意が必要です。

本記事では、不動産広告で遵守すべき表示義務についてポイントを押さえながら分かりやすく解説します。

1.不動産広告で守るべき表示義務一覧

ここでは首都圏不動産公正取引協議会が公開している「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」より、主要な項目をご紹介します。

物件の内容・取引条件等に係る表示基準

表示義務の内容 表示に関するルール
取引態様 「売主」、「貸主」、「代理」「媒介」(「仲介」)の別を明確に記載
物件の所在地

市区町村名・丁目・番地・部屋番号まで詳細に記載

※都道府県、郡は、パンフレット等を除き省略可

※地番は物件種別により一部省略可

※新築賃貸マンション・新築賃貸アパートは住居表示による表示も可。

交通の利便・所要時間の表示

最寄りの駅またはバス停の名称、物件からの徒歩所要時間を明示

※最寄り駅から主要ターミナル駅までのアクセスは特急、急行等の種別・起点及び着点とする駅等を明示
※朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示
※徒歩の場合は分速80mで所要時間を算出(小数点以下は切り上げ)

面積

メートル法で表示(坪数の併記は可能)

※新築分譲の場合、土地・建物の最小面積・最大面積のみで表示可能(パンフレットなどの媒体を除く)
※建物は延べ面積で表示
物質の形質

建築基準法上の居室でない場合は「納戸」などと表記

※DK・LDKの最低必要な広さの目安となる指導基準あり

写真、絵図

取引する宅地または建物以外の写真・動画を掲載しない

見取図、完成図又は完成予想図はその旨を明示し、現況に反する表示をしない

※建物が未完成など特別な事情がある場合は、過去に施工主が手がけた同一構造・階数・仕様で、規模・形状・色などが類似する建物の写真・動画は使用可

設備、施設

上水道:公営水道、私営水道または井戸の別を表示

ガス:都市ガスまたはプロパンガスの別を表示

価格、賃料

税込・税抜の区別を表示

複数物件を広告する場合は最低価格・最高価格と「最多価格帯とその戸数(販売戸数10戸未満の場合は省略可)」を表示

※パンフレットなどの媒体を除く

住宅ローン

以下を明示

・金融機関の名称もしくは商号または都市銀行、地方銀行、信用金庫など・借入金の利率および利息の徴収方式または返済例

不当な二重価格表示 実際に販売する価格よりも高い比較対照価格を併記し、物件価格を割安に見せる「不当な二重価格表示」は原則禁止
おとり広告 実際には取引できない物件を掲載する「おとり広告」は禁止

参考:不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/h_kiyaku.pdf

特定用語の使用基準(合理的根拠がなければ使用できない用語)

(1) 「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語
(2) 「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
(3) 「特選」、「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語
(4) 「最高」、「最高級」、「極」、「特級」等、最上級を意味する用語
(5) 「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」等、著しく安いという印象を与える用語
(6) 「完売」等、著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語

※引用元:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会「特定用語の使用基準」

その他の表示義務

表示義務の内容 表示に関するルール
広告表示の開始時期の制限 宅地の造成または工事の完了前は許可等の処分がなければ広告をしてはならない
建築条件付土地取引における建物に関する表示 建築条件付土地取引に関する広告表示中に表示される建物の設計プランに関する表示:必要な事項を見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で表示する
予告広告の特例

予告広告を行う場合:以下のいずれかの方法で本広告を行う

  1. 当該予告広告を行った媒体と同一の媒体を用い、かつ、当該予告広告を行った地域と同一又はより広域の地域において実施する方法
  2. インターネット広告により実施する方法

予告広告である旨などを明示する

特定事項の明示義務

一般消費者が通常予期できない物件の地勢、立地、環境、取引条件について明示する
※例:再建築不可物件、市街化調整区域内の土地、傾斜地、がけ地、高圧線下の土地など

明示する場合は規定のフォーマットに従い、見やすい大きさ・色で表示する

参照:首都圏不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/h_kiyaku.pdf

2.不動産広告の表示義務とは?

不動産広告は2つの法令と1つの規約によって規制されています。一般消費者の利益を保護するために、誤解を招く表現や不当な広告を防ぎ、消費者が適切な判断を行えるように促すことが主な目的です。

以下の法律に基づいた規制が表示義務として認識されており、不動産広告を制作・配信する際にはこれらのルールを遵守する必要があります。

関連法令①景品表示法

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)とは、不当表示・不当景品から消費者の利益を保護する法令です。

基本的には他業界と同じ水準で表示方法が定められていますが、特に高額な取引が多い不動産業界では、消費者保護の観点からより厳格な運用が求められるケースもあります。適切な広告表現を心がけ、誇張や誤解を招く記載を避けることが重要です。

関連法令②宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、不動産業界における公正な取引を確保するための法令です。不動産会社が適正な情報を提供し、消費者が正しい判断をできるようにすることを目的としています。

不動産広告に関しては、取引態様(売主・貸主・代理・媒介(仲介))の明示や、誇大広告等の禁止、広告の開始時期の制限が規定されており、違反した場合は行政処分の対象となる可能性があります。

関連法令③不動産の公正競争規約

不動産の表示に関する公正競争規約は法令ではなく、正確には「不動産公正取引協議会が自主的に定める規約」です。この規約は主に景品表示法の規定に基づき設定されたもので、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択、および事業者間の公正な競争を確保することを目的としています。

不動産公正取引協議会の加盟事業者は、この規約のもとで定められた「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」および「不動産業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約(景品規約)」を遵守する必要があります。

3.不動産広告の主要な表示基準

不動産広告には、公正な取引を確保するために「不動産の公正競争規約(表示規約)」に基づいた具体的な基準が定められています。不動産広告に関する詳しい表示義務を知りたい場合は、この表示規約を参照するとよいでしょう。

表示規約において示されている具体的な物件の内容・取引条件の表示基準は以下の通りです。

取引態様

取引態様とは不動産会社が取引を行う際の立場を示すもので、取引の透明性を確保して消費者が適切に判断できるようにするために必要な情報です。

不動産広告には「売主」、「貸主」、「代理」「媒介」(「仲介」)の別をこれらの用語を用いて明確に記載しなければなりません。

物件の所在地

不動産広告では、物件の所在地を記載し、都道府県、郡、市町村、字及び地番を表示します。(都道府県、郡は、パンフレット等を除き省略可。地番は物件種別により一部省略可。新築賃貸マンション・新築賃貸アパートは住居表示による表示も可。)

ただし、新聞折込チラシなど特定の物件種別では地番の一部を省略できる場合があります。

所要時間の表示

不動産広告では、最寄りの駅またはバス停の名称および物件からの徒歩所要時間を明示して表示します。公共交通機関を利用する場合は、「物件から最寄り駅(バス停)までの徒歩所要時間」を正しく記載しなければなりません。最寄り駅からバスを利用するときは、最寄り駅の名称、物件から最寄りのバスの停留所までの徒歩所要時間、同停留所から最寄り駅等までのバス所要時間を明示して表示します。この場合において、停留所の名称を省略することができます。

また最寄り駅から主要なターミナル駅までのアクセスを記載する際は、特急、急行等の種別を明示し、乗り換え時間を含めた朝の通勤ラッシュ時の所要時間を表示する必要があります。このとき、平常時の所要時間を併記することも可能です。

徒歩所要時間の計算については、「分速80m(小数点以下切り上げ)」の基準で算出することが義務付けられています。加えて各種施設へのアクセスを表示する場合は、物件からの道路距離または徒歩所要時間を併記しましょう。また、分譲地においてはそのマンション・アパートから最も遠い区画と遠い区画それぞれを起点として算出した数値を表示する必要があります。

面積

不動産広告では、面積を必ずメートル法で表示しなければなりません。必要に応じて坪数を併記することは可能です。

新築の分譲物件については、(パンフレットなどの媒体を除き)土地・建物の面積を最小面積・最大面積で表示することができます。建物の面積については延べ面積での表示が義務付けられており、例えば2階建ての建物であれば「1階と2階部分の合計面積」を表示する必要があります。

間取り・物質の形質

不動産広告内に間取りを記載する義務はありませんが、記載する場合は正確に表示することが求められます。

特に「DK(ダイニングキッチン)」「LDK(リビングダイニングキッチン)」の表記については寝室・居室数に応じて最低必要な広さ(畳数)の下限が、指導基準で定められており、基準を満たさない場合は使用できません。

また、建築基準法上の居室として認められない納戸やその他のスペースは誤解を招かないよう「納戸」など適切な表記をする必要があります。

写真、絵図

基本的には、取引する建物以外の写真・動画を掲載することは認められていません。しかし、建物が未完成など特別な事情がある場合は、過去に施工主が手がけた同一構造・階数・仕様で、規模・形状・色などが類似する建物の写真を使用することが認められています。

類似施設の写真を使用する場合はあくまで他の建物であることと取引する建物と異なる部位を写真に接する位置に明示し、消費者が誤解することのないよう注意が必要です。

また、不動産広告でエリア周辺の状況を表示する際は、現況に反する表示をしないことが原則とされています。消費者に誤解を与えないよう、実際の環境に即した地または建物の完成予想図、CGなどを使用し、その旨を明示する必要があります。

設備、施設

上水道(給水)は、公営水道、私営水道または井戸の別を明確に表示し、消費者が水道の供給方式を正しく理解できるよう記載します。

また、ガスについては都市ガスまたはプロパンガスの違いを明示しましょう。

価格、賃料

不動産広告では、売買価格や賃料を正確に記載します。住宅の価格については、1戸当たりの価格(敷地の価格および建物を含む)を表示する必要があります。また、分譲住宅など複数の物件を広告する場合は「最低価格と最高価格の範囲」を示し、「最多価格帯とその戸数(販売戸数10戸未満の場合は省略可)」を表示します(パンフレットなどの媒体を除く)。

住宅ローン

不動産広告において表示する場合は、以下のようにローン商品の詳細を明確にすることが求められます。

  • 金融機関の名称もしくは商号または都市銀行、地方銀行、信用金庫などの種類
  • 借入金の利率(固定金利・変動金利などの別、および具体的な金利)、利息の徴収方式または返済例

4.不動産広告の表示で避けるべき主要な事項

不動産広告では、消費者の誤解を招かないよう、表示規約に基づきいくつか用語の使用基準が定められています。本項では、その中でも特に注意すべき代表的な事項をご紹介します。

特定用語の使用基準(合理的根拠がなければ使用できない用語)

不動産広告では、以下の(1)から(6)の用語は表示内容を裏付ける合理的な根拠がなければ使用できません。また(4)と(5)は根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用できます。冒頭でも示しましたが、参考として再度不動産公正取引協議会が公表している特定用語の使用基準をご紹介します。

(1) 「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語

(2) 「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語

(3) 「特選」、「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語

(4) 「最高」、「最高級」、「極」、「特級」等、最上級を意味する用語

(5) 「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」等、著しく安いという印象を与える用語

(6) 「完売」等、著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語

※引用元:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会「特定用語の使用基準」

基本的に根拠が提示できない表現は使用不可と考え、具体的かつ正確な情報を記載することが重要です。

不当な二重価格表示

不動産広告において、実際に販売する価格よりも高い比較対照価格を併記して物件価格を割安に見せる「不当な二重価格表示」は原則禁止されています。

過去の販売価格かつ一定の条件を満たす場合に限り例外的に認められることもありますが、賃貸物件においては二重価格表示が完全に禁止されています。

おとり広告

不動産広告において、実際には取引できない物件を掲載する「おとり広告」は重大な表示規約違反として厳しく禁じられています。

特にWeb広告では取引が終了した物件をそのまま掲載し続けていると「おとり広告」と見なされ、処分の対象となる可能性があります。また、公正取引協議会に加盟していない事業者も景品表示法に基づく告示で処分対象になります。

Web広告を運用する際は掲載情報の更新を徹底し、常に最新の取引状況を反映することが重要です。

5.まとめ

不動産広告は、消費者に正確な情報を提供し、公正な取引を確保するために細かなルールが定められています。特に、景品表示法・宅地建物取引業法・不動産の公正競争規約に基づいた表示義務を遵守することが求められます。

広告作成の際は、表示規約に基づいて物件情報を正しく記載し、誇大表現や誤解を招く表現がないかしっかりと確認することが重要です。「おとり広告」「不当な二重価格表示」などの表示義務違反を避けるためにも、情報の更新やコンプライアンスチェックを徹底しましょう。

不動産広告を適正に運用するためには、表示規約などを理解して専門知識を持つ担当者がチェックを行うことが不可欠です。規約や法令を遵守しながら消費者に信頼される広告運用を心がけることで、より効果的なプロモーションを実現できます。

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