不動産広告の価格・賃料表示ルールとは?総額表示・二重価格表示の注意点
不動産広告の価格・賃料表示ルールは、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)や不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(以下、表示規約)によって細かく定められています。本コラムでは、総額表示や二重価格表示、管理費・共益費等の内訳表示、消費税の扱いなど、広告担当者が判断に迷いやすいポイントを整理して解説します。
1.不動産広告の価格表示の基本ルール
価格・賃料表示には、宅建業法と不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則
という2つの根拠があります。まずはそれぞれの基本的な位置づけを確認しましょう。
不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則とは
「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」は、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)第36条第1項の規定に基づき、公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて制定された自主規制ルールです。
宅建業を営む事業者が広告表示を行う際に遵守するべき具体的な基準を定めており、価格・賃料の表示についても細かな規定が置かれています。景品表示法という法律を根拠にしながらも、実際の運用は不動産業界団体が自主的に担っている点が特徴で、規約側では表示するべき項目や文字サイズなどが具体的に定められています。
表示規約は不動産公正取引協議会連合会や各地域の協議会が運用しており、過去に問題なく掲載できていた表現でも、規約の改正によって扱いが変わっている可能性があるため、慣例だけを根拠に判断しないよう注意しましょう。新人担当者への教育においても、表示規約の存在を自社内研修などで共有しておくことが望ましいでしょう。
宅地建物取引業法第32条(誇大広告等の禁止)
宅建業法第32条では、広告に係る代金や借賃(賃料)等の対価の額について、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく有利であると人を誤認させるような表示が禁止されています。表示規約が業界団体による自主規制ルールであるのに対し、宅建業法は法律上の規制である点が異なり、広告担当者はこの二重の枠組みのもとで広告表示が運用されている点を押さえておくとよいでしょう。
特に価格や賃料は消費者の購買判断に直結する情報であるため、自社内での確認体制を軽視すると、意図せず誇大広告に該当してしまうおそれがあります。
そのため、掲載前のダブルチェックを制作フローに組み込むことをおすすめします。特に繁忙期や大型キャンペーンの実施時期は、確認作業が省略されやすい傾向があるため、通常より確認工数を多めに見込んでおくことが望ましいでしょう。自社だけでのチェックに不安がある場合は外部の不動産業界の広告コンプライアンスチェックを活用することも一つの方法です。
2.二重価格表示の禁止条件と例外
値下げ訴求でよく使われる二重価格表示には、明確な禁止条件と例外要件が定められています。
二重価格表示とは(表示規約第20条)
実際に販売する価格(実売価格)に、これよりも高い価格(比較対照価格)を併記する「二重価格表示」は、事実に相違する表示や、実際のもの・競合他社のものより有利であると誤認されるおそれのある表示はしてならないとされています。
「今だけの特別価格」といった表現も、比較対照価格の根拠が曖昧なまま使用すると、有利誤認表示とみなされるおそれがあるため注意が必要です。
例外が認められる要件と賃料表示の注意点(表示規約施行規則第12条)
過去の販売価格を比較対照価格として表示する場合、公表日・値下げ日の明示、値下げ前の価格を2カ月以上公表していたこと、値下げから6カ月以内の表示であることなど、複数の要件をすべて満たせば例外的に認められます。
この適用除外規定は土地・建物の売買価格が対象であり、賃貸物件の賃料についての適用除外は定められていません。そのため、賃料の二重価格表示は認められていません。この論点は他の解説記事ではあまり触れられていませんが、賃貸物件を扱う広告担当者にとっては特に重要なポイントといえるでしょう。
「家賃を〇万円から値下げ」といった賃料の二重価格表示を売買物件と同じ感覚で行うのは危険であり、現在の賃料のみを表示する方法を基本とすることが無難です。賃料を引き下げて成約につなげたい場合は、フリーレントや初期費用の軽減など、二重価格表示に頼らない別の切り口を検討する必要があるでしょう。
3.賃料・管理費等の内訳表示ルール
賃貸物件の広告では、賃料と管理費等を区別して表示しなければなりません。それぞれの表示ルールを見ていきましょう。
賃料の表示
賃貸される住宅の賃料は、原則として取引する全住戸の1カ月当たりの賃料を表示することとされています。ただし、新築賃貸マンションや新築賃貸アパートについては、パンフレット等の媒体を除き、1住戸当たりの最低賃料および最高賃料のみで表示することが認められる場合があります。
住戸数の多い物件では全戸分の賃料を紙面やWeb広告のスペースに収めることが難しいため、この規定を活用しているケースも見られますが、パンフレットなど詳細情報を伝えられる媒体では原則どおり全住戸の賃料を表示することが基本になる点に留意しましょう。
管理費・共益費・修繕積立金の別記
管理費とは共用部分の維持管理に必要な費用のことで、修繕積立金は含みません。共益費とは、借家人が共同で使用・利用する設備や施設の運営・維持に関する費用のことです。これらはそれぞれ1戸当たりの月額を賃料と区別して表示することとされています。
金額が確定していない予定額の場合はその旨を明記し、住戸ごとに額が異なり全戸分の表示が困難な場合は、最低額と最高額のみを示す表示も認められる場合があります。賃料と一体の金額として表示すると、閲覧者にとって実質的な負担額が分かりにくくなるだけでなく、規約違反となるおそれもあるため注意しましょう。
4.消費税の表示ルール
不動産価格の表示では、消費税の扱いも重要なポイントです。
不動産価格の総額(税込)表示
不動産の価格は、建物にかかる消費税等の額を含めた総額で表示することとされています。土地の譲渡は消費税が非課税である一方、建物の譲渡には課税されるため、住宅(マンションの場合は住戸)の価格は敷地価格と建物価格(消費税等込み)を合算した1戸当たりの総額で表示することとされています。
価格データを受け取る際は、税込・税抜のどちらであるかを必ず確認しましょう。営業担当者や設計担当者から受け取る価格情報が自社内的には税抜ベースで管理されているケースもあるため、部署をまたいだ情報連携の際は特に注意が必要です。また、消費税率そのものが変更される時期をまたいで広告を出稿する場合は、契約時点でどちらの税率が適用されるのかについても事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
消費税に関する不当表示
建物の価格について、消費税が含まれていないにもかかわらず含まれていると誤認されるおそれのある表示は、不当表示として禁止されています(表示規約第23条)。「税込」の文言を明記していなくても、実際に税込であれば規約違反にはなりませんが、誤認を避けるため税込である旨を分かりやすく明示しておくことが望ましいでしょう。
5.Web広告制作で見落としやすい落とし穴
最後に、Web広告ならではの落とし穴として、次の2点に注意しましょう
文字サイズと表示媒体ごとの解釈
不動産広告における「見やすい大きさの文字」は原則7ポイント以上とされていますが、文字数やレイアウト、書体、文字色、文字間隔等を総合的に勘案して判断される場合もあります。
バナー広告やSNS広告など表示面積が限られる媒体では、管理費や消費税等の付随情報が省略され、必要な表示事項が欠落しやすいため注意しましょう。スマートフォンでの閲覧を前提としたレイアウトでは価格や賃料は大きな文字で表示される一方、注記部分の文字が極端に小さくなってしまう例も見受けられるため、デザインと表示ルールのバランスを取る視点を制作担当者とWeb担当者の双方で共有しておくことが大切です。
動的に価格が変動するWeb広告特有のリスク
不動産ポータルサイト連携やリスティング広告など価格情報が自動更新される仕組みでは、価格改定時に旧価格の表示が広告キャッシュ等に残存し、意図せず二重価格表示や有利誤認表示に該当するおそれがあります。広告代理店や制作会社の立場では、入稿データと最新の取引条件との突合体制をあらかじめ整えておくことが欠かせません。検索エンジンやSNS広告のキャッシュ、外部サイトへの再配信データなど自社で完全にはコントロールしきれない箇所もあるため、定期的な巡回確認も有効な対策の一つです。
専門的な視点での確認が必要な場合は、不動産広告コンプライアンスチェックサービスもご活用ください。
6.まとめ
不動産広告の価格・賃料表示には、宅建業法や不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則による細かなルールが定められている場合があります。総額表示の要否、二重価格表示の可否、管理費・共益費等の内訳表示、消費税の扱いなど、判断に迷いやすいポイントは少なくありません。とりわけ賃料の二重価格表示のように、売買物件とは異なる注意が必要な場合もあります。違反した場合は違反内容に応じた措置が講じられる可能性があるため、規約や施行規則の改正にも注意し、判断に迷う際は所属地域の不動産公正取引協議会へ問い合わせることが望ましいでしょう。