【最新】不動産広告の距離表示を解説!2022年9月改正の内容も反映
不動産広告における距離表示は、消費者が物件の利便性を比較検討する際の重要な指標です。物件の資産価値や企業の信頼性を担保する役割を担っており、常に正確な情報提供が求められます。
距離表示における徒歩所要時間の算出方法や表示には、表示規約によって様々な規約・ルールが設けられています。
表示規約は2022年9月に改正されており、距離表示の規約・ルールにも多くの変更がありました。中には、従来の表示では規約違反となり、厳しいペナルティを受けるおそれがあるケースもあります。
本記事では、不動産広告における距離表示の基本から改正内容、広告制作時の注意点まで丁寧に解説します。
1. 不動産広告の距離表示における徒歩所要時間とは
不動産広告に駅やバス停などの主要施設を掲載する場合、距離または徒歩所要時間の表示が求められます。
徒歩所要時間は「徒歩〇分」と表記され一見シンプルに見えますが、不動産広告では算出方法を誤ると、表示規約に違反するおそれがあります。
まずは、実務で重要な徒歩所要時間の算出方法から順に確認していきましょう。
徒歩所要時間の算出方法
不動産広告における徒歩所要時間は、「道路距離80mにつき1分」として算出します。算出の結果1分未満の端数が生じた場合は、切り上げて1分とします。
例えば、物件から最寄り駅までの道路距離が300mの場合、「300÷80=3.75」となり、端数を切り上げて「徒歩4分」と表示します。
ここで注意したいのが、道路距離は直線距離ではなく実際に歩く距離であることです。道路や鉄道などを越えるために、横断歩道や歩道橋、踏切などを経由する場合は、その距離を含める必要があります。
一方で、信号待ちや上り坂による歩行時間の延長を考慮する必要はありません。
徒歩所要時間とは
算出方法の対象となる移動範囲を明確にするため、徒歩所要時間の定義も整理しましょう。
徒歩所要時間とは、「物件の所在地を起点として、徒歩で主要施設まで移動する際にかかる時間」のことです。
主要施設の中でも徒歩で行ける最寄り駅やバス停を掲載する際は、必ず徒歩所要時間もしくは距離を掲載する必要があります。
例えば、不動産広告に物件から施設Aへの徒歩所要時間が3分である旨を掲載する場合、「Aまで徒歩3分」といった形で表示します。
徒歩所要時間と実際の所要時間がずれる理由
不動産広告に表示される徒歩所要時間と、実際に歩いた際の所要時間とで差が生じる場合は少なくありません。
これは、徒歩所要時間を算出する際、表示規約に基づいた一定の速度を基準としているのが要因です。
実際の歩行速度は個人差があることに加え、信号待ちや上り坂の負担が徒歩所要時間には反映されていません。そのため、不動産広告に表示される徒歩所要時間と、実際の所要時間には差が生じることがあります。
実際の所要時間には個人差があるからこそ、広告上では規約・ルールに基づいた客観的な基準を厳格に適用することが求められます。
距離表示のルールを決める「表示規約」とは
徒歩所要時間をはじめとした不動産広告における距離表示の規約・ルールは、「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(以下表示規約)」によって定められています。
表示規約とは、景品表示法第36条第1項の規定に基づき、公正取引委員会と消費者庁から認定を受けている不動産業界の自主規制ルールです。
表示規約に違反すると、警告や厳重注意、違約金の徴収などの処分につながり、企業ブランドにも大きな影響を及ぼします。そのため、不動産広告を制作する上で表示規約の理解は必須といえます。
特に2022年9月1日に大きな改正が行われ、距離表示に関する規約・ルールも多く変更されました。今回はこの改正の内容を踏まえ、不動産広告における表示の仕方を解説します。
2. 不動産広告の距離表示における基本
ここからは、不動産広告の距離表示の基本的な考え方を整理します。
最寄り駅やバス停、各種施設までの距離表示は、表示方法を誤ると規約違反につながる可能性があるため、最新の正しい規約・ルールを押さえておくことが重要です。
最寄り駅やバス停までの距離表示
最寄り駅やバス停の距離表示は、駅・バス停の名称とともに、物件を起点とした駅までの徒歩所要時間もしくは距離を記載する必要があります。
物件からA駅までの徒歩所要時間が5分の場合、表示は「物件からA駅まで徒歩5分」とします。
なお、道路距離(メートル)のみの表示も可能ですが、多くの広告では併記されています。
最寄り駅までバス停を利用する際の距離表示
最寄り駅までバスを利用する場合、物件からバス停までの徒歩所要時間もしくは距離と、バス停から駅までの所要時間をそれぞれ表示する必要があります。
物件からB駅に向かう際にバスを利用する場合は、「物件から最寄りのバス停まで徒歩8分、バス停からB駅まで10分」のように表示します。
施設までの距離表示
学校や病院、スーパーなどの施設を不動産広告に掲載する場合は、物件から施設までの道路距離または徒歩所要時間のいずれかを明示する必要があります。
例えば、「物件からスーパー○○まで徒歩5分」「物件から××小学校まで100m」のように表示します。
道路距離と徒歩所要時間は、併記して表示することも可能です。しかし、「近くに学校があります」というように具体的な道路距離や徒歩所要時間がない表示は、規約違反となります。
3. 表示規約改正による不動産広告の距離表示の変更点
2022年9月の表示規約の改正により、不動産広告における距離表示の規約・ルールは大きく見直されました。ここでは、現在の広告制作において実務に直接影響するポイントを取り上げます。
物件の起点は建物の出入り口に
距離表示における物件の起点は「建物の出入り口」と定められました。
改正前は、敷地内で主要施設に最も近い地点を起点にしてもよいとされていましたが、消費者の生活実態に即して所要時間を分かりやすく伝えるために変更されました。
これまで敷地内で主要施設に最も近い地点を起点としていた場合は、徒歩所要時間や道路距離に変更が生じる可能性があります。
また、大規模マンションなどで出入り口が2か所以上ある場合は、メインエントランスではなく、サブエントランスを起点とすることも可能です。
2戸以上の分譲物件における起点の変更
2戸以上の分譲物件の距離表示においては、施設までの徒歩所要時間または道路距離を、「最も近い住戸(区画)」と「最も遠い住戸」の両方で示すことが必要になりました。
例えば、複数棟の分譲マンションで、A駅まで最も近い棟から徒歩5分、最も遠い棟から徒歩8分の場合であれば、徒歩所要時間は「A駅まで徒歩5分~8分」と表示します。
改正前は、最も近い住戸のみを記載すればよいとされていました。しかし、一定規模の分譲地などでは住戸の位置によっては距離が大きく異なるため、表示された時間で目的地にたどり着けない場合がありました。
改正で実態に即した数値となったため、消費者に対してより正確で誠実な情報提供が可能になったといえます。
通勤ラッシュ時の所要時間明記
公共交通機関による主要駅までの所要時間を示す場合、朝の通勤ラッシュ時の所要時間の表示が義務化されました。
平常時の所要時間は、通勤ラッシュ時の所要時間と併記する場合に限り掲載できます。なお、起点と着点の駅名、特急・急行・快速などの運行種別については、従来通り明記する必要があります。
例えば、A駅からB駅まで、朝の通勤ラッシュ時には特急で40分、平常時には30分かかる場合は、不動産広告には「A駅からB駅まで通勤特急で40分(※平常時は特急で30分)」と表示します。
乗り換えは移動・待ち時間を含む
乗り換えがある場合は、その旨だけでなく、乗り換えの際に生じる移動・待ち時間も所要時間に含めて表示することが義務化されました。
例えば、A駅からC駅まで、B駅での乗り換えも含む所要時間が20分から25分である場合は、「最寄りのA駅からC駅まで20分~25分(B駅でD線に乗り換え)(所要時間には乗り換え・待ち時間を含む)」のように表示します。
4. 避けるべき不動産広告の距離表示
不動産広告における距離表示は、信頼を損なわないためにも、表示規約に基づき消費者に誤解を与えない形で行わなければなりません。
ここでは、トラブルを未然に防ぎ、信頼される広告づくりに重要なポイントを解説します。
誤認させるおそれがある表現
不動産広告において実際よりも優れていると消費者に誤認させる表現は、表示規約で禁止されています。
距離表示の場合、駅までの距離を直線距離で示し、あたかも実際の徒歩距離であるかのように示すのは「誇大広告」に該当し、規約違反となります。
このような誤解を招く表示は信頼を損なうことにもつながるため、注意が必要です。
ルートの恣意的な選定による誤表示
道路距離を測定する際は、一般的に利用される最短の歩行経路を採用する必要があります。
日常的に使われない危険な抜け道や、特定の時間帯しか通れない私道などが経路に含まれる道路距離は規約違反と見なされる可能性があります。
道路距離を測定する際は、誰がいつ歩いても再現できる経路を採用することが重要です。
過去データを確認せずに利用
道路環境や周辺施設の整備状況は年々変化しており、過去のデータをそのまま利用すると、実際の道路距離や徒歩所要時間と異なる情報を掲載してしまう可能性があります。
また、2022年9月の表示規約改正で物件の起点が変更されたように、今後も距離表示の規約・ルールの変更が行われる可能性があります。
過去の基準で測定されたデータの利用は表示規約に違反するリスクが大きいため、広告制作や規約改正の際には必ず最新の規約・ルールで経路を確認することが重要です。
5. まとめ
不動産広告では、表示規約に基づいた距離表示が求められます。
徒歩所要時間は、道路距離80mにつき1分として算出します。信号待ちや坂道の影響を考慮する必要はありませんが、直線距離ではなく、実際に歩く道路距離を用いることに注意が必要です。
また、2022年9月の表示規約の改正では、距離表示に関する変更が多く行われました。
距離表示の規約・ルールは、今後も見直されていく可能性があります。広告制作の際には常に最新の表示規約を確認し、正しい情報提供を心がけることが重要です。