Web広告の規制とは?不動産業界が押さえておきたい法律と注意点
ネット広告の規制について調べている広告担当者の中には、景品表示法や特定商取引法などWeb広告に関わる法律が複数あり、どこまで確認すればよいか分かりにくいと感じる方もいるのではないでしょうか。
広告業界の規制は実際のトラブルや通報事案などをもとに適宜改正が行われており、過去の知識のままでは対応が追いつかないケースがあります。特に不動産・住宅業界は一般的な規制に加えて業界特有のルールも重なるため、確認すべき項目が多くなりがちです。
本コラムでは、Web広告に関わる主な法律の内容と、不動産・住宅業界特有の注意点を整理して解説します。
1.Web広告にはどんな法律が関わるのか
Web広告には、複数の法律が関わります。まずは全体像を整理します。
複数の法律が重なり合う領域
Web広告には不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)が広く関係します。特定商取引法は通信販売など同法が定める取引類型に該当する場合に適用され、業種・商材に応じて宅地建物取引業法(以下、宅建業法)や薬機法等も関係します。関わる法律は一つではないという前提を持っておくことが非常に重要なポイントで、自社が扱う商材によってどの法律が適用されるかを事前に整理しておくと、確認漏れを防ぐことができます。
媒体を問わず適用される原則
これらの法律は、Webサイトやリスティング広告、SNS広告など媒体の形式に関わらず適用される原則です。紙媒体向けに定められたルールであっても、表示内容そのものに関する規制はWeb広告にも同様に及びます。
媒体が変わっても確認すべき観点は変わらず、「Web広告だから紙媒体より規制が緩い」といった認識は大きな誤りです。
不動産・住宅業界特有の上乗せ規制
不動産・住宅業界では、これらの一般法に加えて、宅建業法や不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(以下、表示規約)による上乗せの規制があります。
他業種以上に表現の正確性が求められる業界であるがゆえに、一般的なWeb広告のルールを守るだけでは不十分な場面も少なくありません。次の章から、それぞれの内容を確認していきます。
2.景品表示法が定めるWeb広告の基本ルール
景品表示法は、消費者が商品・サービスを適切に選択できる環境を守るための法律です。Web広告に関わる法律の中でも、最も広く適用される基本的なルールといえます。
優良誤認表示・有利誤認表示の禁止
景品表示法では「実際よりも優良・有利と誤認させる表示」が禁止されており、不動産広告では物件の品質・価格・立地などに関する誇大表現が対象となります。品質等について誤認させる表示は「優良誤認表示」、価格等の取引条件について誤認させる表示は「有利誤認表示」と呼ばれ、実際の条件と広告の表現に差が生じないよう注意が必要です。
ステルスマーケティング規制
2023年10月1日からは、広告であることを隠す表示、いわゆるステルスマーケティングも景品表示法の規制対象に加わりました。インフルエンサーへの依頼やレビュー掲載を行う際は、広告であることが分かる表示が必要で、自社の従業員によるSNS投稿であっても事業者の意向が反映されている場合は対象になり得ます。
直罰規定の導入
2024年10月1日施行の改正景品表示法では、故意に著しく誤認させる不当表示を行った事業者に対し、措置命令を経ずに100万円以下の罰金を科すことができる直罰規定が新設されました。悪質なケースへの対応がこれまで以上に厳格になっており、事業者側にも表示内容の正確性に対する意識の高さが求められています。
3.特定商取引法が定める通信販売広告のルール
特定商取引法は、通信販売など同法が定める取引類型に該当する場合に適用される法律です。資料請求や会員登録などが行われる場合は適用範囲には含まれず、有償契約の申し込みが行われる場合が対象となります。自社の広告がどの取引類型に該当するのかを、まず整理しておくことが確認の出発点になります。
広告に必須の表示事項
特定商取引法が適用される通信販売広告では、販売価格や送料、支払い方法、引き渡し時期、返品に関する事項など、法律で定められた事項を表示する必要があります。
表示が漏れていると、それ自体が是正の対象になり得るため、広告ページのテンプレートに必須項目をあらかじめ組み込んでおくと漏れを防ぐことができます。
最終確認画面の表示義務
有償契約の申し込みの最終確認画面(無料の場合は必須ではありません)では、契約内容や総額、申し込み内容の訂正方法などを分かりやすく表示することが義務づけられています。これは、画面設計の段階から確認しておきたいポイントで、申し込みボタンを押す直前に内容を見直せる導線になっているかも重要な確認項目です。
4.不動産・住宅業界に上乗せされる規制
一般的な「ネット広告規制」の解説は景品表示法・特定商取引法にとどまるものが多いため、ここでは不動産・住宅業界特有の上乗せ規制について紹介します。
一般法だけを確認して安心してしまうと、業界特有のルールを見落とすおそれがあります。宅建業法や表示規約が定める表示義務の詳細は、下記コラム内で一覧化していますので、あわせてご確認ください。
宅建業法による誇大広告等の禁止
宅建業法では、物件を実際のもの・条件よりも著しく優良・有利であると誤認させる誇大広告等が禁止されています。景品表示法とあわせて確認しておきたい規制で、違反した場合は指示処分や業務停止処分の対象となることがあるとされています。
表示規約による細かな基準
表示規約では、徒歩所要時間の算出方法(道路距離80mにつき1分として計算し、1分未満の端数は1分に切り上げる)や、完成予定年月の表示、価格・賃料表示のルールなど、景品表示法や宅建業法よりも細かな基準が定められています。実務上はこの細かな基準への対応が問われる場面が多くあります。
一般法と業界規制を両輪で確認する視点
Web広告を制作・確認する際は、景品表示法・特定商取引法といった一般法と、宅建業法・表示規約といった業界規制の両方を確認する視点が欠かせません。どちらか一方だけの確認では見落としが生じるおそれがあり、両方の観点をあわせ持つチェック体制を整えることが重要です。
5.規制違反を防ぐためのチェック体制
規制違反を防ぐには、日頃からのチェック体制づくりが重要になります。担当者個人の知識や注意力だけに頼るのではなく、組織として仕組みを整えておくことが望ましいでしょう。
複数の法律を横断してチェックする仕組み
景品表示法・特定商取引法・宅建業法・表示規約など、関係する法律・規約を横断して確認できるチェックリストを整えておくことが有効です。担当者ごとに確認範囲がばらつかないよう、共通のフォーマットを用意し、確認結果を記録に残しておくことも望ましいでしょう。
公開前後のダブルチェック
広告を公開する前だけでなく、公開後も定期的に表示内容を見直し、法改正や規約改正への対応漏れがないかを確認する仕組みを設けることが望ましいでしょう。公開時点では問題がなくても、規制の改正によって後から見直しが必要になる場合もあります。担当者が変わった際に確認の抜け漏れが起きやすいため、チェック項目を属人化させない工夫も大切です。
専門家・外部サービスの活用
自社内だけで全ての法律・規約を継続的に把握することが難しい場合は、外部の広告チェックサービスの活用も一般的な選択肢の一つです。
6.まとめ
不動産・住宅業界のWeb広告には、景品表示法や特定商取引法といった一般法に加え、宅建業法や表示規約による上乗せの規制が関わります。規制違反を防ぐためには、複数の法律・規約を横断してチェックできる体制を整え、公開前後のダブルチェックを継続することが大切です。近年は景品表示法の直罰規定新設やステルスマーケティング規制の追加など、規制強化の動きが続いています。法改正の動きも踏まえながら、自社の確認体制を定期的に見直していきましょう。