不動産広告における誇大広告とは?法律が禁ずる表現と罰則・対策を解説

不動産広告における誇大広告とは?法律が禁ずる表現と罰則・対策を解説
SHINWA'S PICKS編集部

不動産広告を制作する際、必ず確認しておきたいのが「誇大広告」に関する法律です。2024年の景品表示法改正により、罰則の内容にも変更がありました。

本コラムでは、誇大広告を規制する法律と規約の全体像から、禁止・制限される表現、違反時の罰則、生成AI時代の注意点まで分かりやすく解説します。

1.誇大広告を規制する法律と規約の全体像

不動産広告の誇大広告は、主に次の3つの法律・規約によって規制されています。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)

消費者が商品・サービスを適切に選択できる環境を守るための法律です。

この法律は「実際よりも優良・有利と誤認させる表示」を禁止しており、不動産広告では物件の品質・価格・立地などに関する誇大表現が対象となります。

2024年施行の改正景品表示法により、故意に著しく誤認させる不当表示を行った事業者に対し、措置命令を経ずに刑事罰(100万円以下の罰金)を科すことができる「直罰規定」が新設されました。なお、不当表示に係る売上の3%相当を課徴金として納付する制度自体は2016年から運用されており、2024年の改正ではこれに加えて直罰規定などが新設されています。

課徴金制度は違反の抑止力を高める目的で設けられており、故意でなくても不当表示に該当すれば対象となり得るため、広告担当者は日頃から表現のチェックを徹底する必要があります。

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宅地建物取引業法(以下、宅建業法)

第32条に誇大広告等の禁止が定められており、「著しく事実に相違する表示」または「実際のものよりも著しく優良・有利と誤認させる表示」が禁止対象です。

違反した場合は6カ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。さらに、業務停止処分や免許の取消処分を受けるリスクもあります。

宅建業法は不動産取引の当事者を保護する観点から設けられた法律であり、広告表現だけでなく、重要事項説明や契約書面の記載内容とも一貫性を保つことが求められます。

不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(表示規約)

景品表示法に基づいて不動産業界が設けた自主規約・ルールです。

使用禁止の表現や使用条件が詳細に定められており、宅建業法・景品表示法と並んで広告担当者が必ず押さえておくべき規約です。

なお、表示規約は不動産業界の公正取引協議会が運営しており、業界団体に加盟する事業者はこのルールを遵守する義務を負います。

2.不動産広告で使用が禁止または制限される表現一覧

表示規約では、使用の可否によって表現がいくつかのカテゴリーに分類されています。

絶対禁止の最上位表現・断定表現

表示規約では、客観的な根拠を示せない限り使用が認められない、最上級表現・断定表現が定められています。具体的には「日本一」「業界一」「No.1」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」「完全」「完璧」「絶対」「万全」などが該当します。

客観的な根拠が完全に証明できない限り使用が禁止されており、安易に使用すると違反になるため、広告文を作成する際には注意が必要です。こうした最上位表現は、消費者の期待感をあおる効果が高い分、根拠のない表示が発覚した際の信頼失墜も大きいため、慎重な運用が求められます。

条件付きで使用可能な表現

「最高」「最高級」「格安」「掘出」「特選」「厳選」「土地値」などは、客観的な根拠を明示することを条件に使用できる場合があります。ただし「格安」などの価格表現は市場相場との比較データ、「特選」は具体的な選定基準の明示が必要です。根拠を示せない場合は表示規約違反となります。根拠資料は広告制作時だけでなく、後日の問い合わせに備えて一定期間保管しておくことが望ましいです。

距離・面積・期間などの数値表現の注意点

「駅まで徒歩〇分」の表記は80m=1分の計算ルールが定められており、小数点以下は切り上げが必要です。道路距離(道のり)ではなく直線距離を元に算出・表記することは不当表示となります。また専有面積や土地面積の数値も根拠となる計測に基づいた正確な値の記載が求められます。販売開始前後で道路状況の変化や施設の統廃合が生じることもあるため、広告掲載前には最新の情報をもとに再確認する習慣をつけておくと安心です。

3.誇大広告に該当した場合の罰則と行政処分

景品表示法違反の場合、消費者庁から違反広告の撤回・再発防止を命じる「措置命令」が下され、企業名が公表されます。2024年改正の直罰規定により、故意による優良誤認・有利誤認表示には措置命令を経ずに100万円以下の罰金が科される場合があります。さらに不当表示期間中の売上の3%相当(課徴金が150万円以上になる場合)の課徴金納付命令が下されることもあります。課徴金の対象となる売上額の算定期間は最長3年間とされており、違反が長期間続くほど納付額も大きくなる仕組みになっています。

宅建業法違反の場合は、国土交通大臣または都道府県知事から業務停止処分や免許の取消処分が下される可能性があります。違反した個人だけでなく、両罰規定により法人にも同様の罰金刑が科されるケースがあります(個人には6カ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方)。なお、行政処分の内容は公表されることが多く、一度の違反が企業の信頼性やその後の集客活動に長期的な影響を及ぼす可能性もあります。

表示規約に違反した場合は、違反内容に応じて違約金等の措置が講じられることがあるほか、不動産ポータルサイトへの長期掲載停止などの措置が取られる場合もあります。違反が繰り返された場合は、より厳しい措置が講じられる可能性もあるため、一度指摘を受けた表現は社内でリスト化し、再発防止に役立てることが重要です。

4.不動産業界で誇大広告とみなされやすい具体的な表現例

ここでは、実際の広告制作で誇大表示に該当しやすい代表的なパターンを紹介します。自社の広告物を見直す際のチェックリストとしても活用できるよう、具体的な表現例とあわせて確認していきましょう。

立地・交通アクセスに関する誇大表示

「駅まで1km」と記載しながら実際の歩行距離が4kmであるケースや、「駅徒歩5分」と表記しながら80m×5分=400mを超えるルートを使用しているケースは誇大広告に該当します。また、バス停や商業施設までの所要時間を実際より短く記載することも禁止です。

距離表示は物件から目的地までの経路のうち、実際に歩行可能な道路を基準に算出する必要があり、私有地を通る近道などを前提とした表記は認められません。

景観・設備に関する誇大表示

「全室オーシャンビュー」と謳いながら一部の部屋からしか海が見えないケース、「最新設備完備」と記載しながら特定の設備のみが新しいケースなどが典型的な例です。

物件の画像や間取り図と実態が大きく異なる場合も誇大広告となります。特にリフォーム前後の画像を混在させて掲載する場合は、どの時点の状態かを明記するなど、誤認を防ぐ工夫が欠かせません。

価格・収益に関する誇大表示

「エリア最安値」「相場より〇割引き」などの価格表現を行う際は、根拠となる比較データが必須です。投資物件では「表面利回り〇%」を過度に強調して実質利回りや費用を隠すケース、「家賃保証付き」の条件を曖昧に記載するケースは問題となります。

価格や利回りに関する表現は、消費者の購買・投資判断に直結する情報であるため、他の項目以上に根拠の裏付けが厳しく求められます。

5.生成AI活用が広げる新たな誇大広告リスクと広告チェック体制の構築

近年、生成AIを活用して広告文章を自動生成するケースが増えていますが、AIは法令遵守を保証するものではなく、人による確認が必要です。

「業界最高品質」「完全サポート」「No.1の実績」などの禁止表現が生成コンテンツに含まれるリスクがあり、特に複数の担当者がAIを活用して広告を作成する環境では、チェック体制がなければ誇大広告が量産されるリスクがあります。

また、消費者サイドでも生成AIを使って物件情報を調べる動きが広がっており、不正確または誇張された広告情報がAIに学習されることで、誤情報が広範囲に拡散するリスクも生まれています。誤った情報がインターネット上に一度拡散すると、訂正や削除が難しくなるケースもあるため、発信前のチェック体制の重要性は今後さらに高まると考えられます。

広告担当者として押さえるべき対策は、①禁止表現リストの整備と自社内共有、②AI生成コンテンツへの必須チェックプロセスの導入、③公正競争規約の定期的な確認の3点です。これらの対策を一度整えるだけでなく、広告出稿の頻度や担当者の入れ替わりにあわせて定期的に見直すことで、実効性のあるチェック体制を維持できます。

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6.まとめ

不動産広告における誇大広告は、景品表示法・宅建業法・表示規約の3つのルールで規制されており、特に景品表示法は2024年の改正により罰則が強化されています。最上位表現や根拠のない価格・収益表現は特に注意が必要です。生成AIを活用する場合も人によるチェック体制を整え、正しい知識をもとに広告制作を行いましょう。法令や規約は改正されることもあるため、広告担当者は最新の情報を継続的に確認し、必要に応じて社内のチェックリストを見直していく姿勢が求められます。