景品表示法で禁止されている「おとり広告」とは?不動産業界で起こりやすい原因や防止対策も解説
不動産業界では、消費者の適切な物件選択と公正な取引環境を守るため、景品表示法に基づきおとり広告が厳しく規制されています。
しかし、法令や規約の内容が複雑であるため、不動産業界では意図せずおとり広告が発生するケースも少なくありません。
本記事では、不動産会社の広告・マーケティング担当者に向け、不動産業界におけるおとり広告の基礎知識や発生しやすい原因、防止策について解説します。
景品表示法違反となる「おとり広告」の基礎知識
まずは、不動産業界におけるおとり広告の基礎知識やおとり広告に該当するケース、違反した場合の罰則について解説します。
不動産業界における「おとり広告」とは
おとり広告とは、集客を目的として、実際には取引できない商品やサービスを表示している広告のことです。広告のミスや管理不足によって意図せず発生してしまう場合もあり、不動産業界では以下のようなケースがおとり広告として問題になります。
・実在しない物件や実際には契約できない条件の広告掲載
・成約済みなどの理由により契約できない物件の広告掲載
・取引する意思がない物件の広告掲載
景品表示法に基づくおとり広告の規定
景品表示法とは、事業者による過大・不適切な広告を防ぎ、消費者の適切な商品選択を保護することを目的とした法律です。おとり広告は消費者に誤った判断をさせるおそれがあり、公正な取引環境を損なうため、景品表示法によって厳しく規制されています。
中でも、不動産広告については、景品表示法に基づく告示として「不動産のおとり広告に関する表示」が定められています。
また、不動産広告は宅地建物取引業法で、物件情報について著しく事実に相違する表示をすることなどが禁止されています。
法令だけでなく、景品表示法に基づく「不動産の表示に関する公正競争規約」という業界独自のルールもあり、こちらもおとり広告を厳しく規制しています。
不動産広告は、これらの規約・ルールを遵守して作成しなければなりません。
おとり広告の罰則について
おとり広告に該当した場合、違反の性質などに応じて以下のような罰則の対象となる可能性があります。
・景品表示法による罰則
消費者庁から違反広告の撤回や再発防止策の構築などの措置命令が下され、企業名が公表されます。措置命令に違反した場合は、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の刑事罰が科されます。
・宅地建物取引業法による罰則
国や都道府県から、営業停止処分や宅地建物取引業の免許取り消しなどの行政処分が下されます。また、個人に対しては6ヵ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)の刑事罰が科される場合もあります。
・不動産の表示に関する公正競争規約に基づく措置
最大500万円の違約金が科されることに加え、不動産ポータルサイトや業界団体による長期間の広告掲載停止等の措置が取られる場合があります。
景品表示法でおとり広告に該当するケース3選
以下では、不動産広告がおとり広告に該当する基準について、景品表示法の告示に基づく3類型に沿って解説します。
実在しない物件や契約できない条件を掲載した場合
実在しない物件や実際とは異なる物件情報、契約条件などを記載している場合はおとり広告になります。例えば、更地に建物があるかのような掲載や、実在しない住戸を掲載するケースが挙げられます。
また、実際には契約できない好条件を掲載して問い合わせを集め、別の物件へ誘導するようなケースもおとり広告となります。
これらは問い合わせ対応の混乱や不信感につながり、不動産会社の信用を大きく損ないます。
実際には取引できない物件を掲載した場合
成約済みの物件や募集を停止した物件など、実際には取引できない物件を掲載し続けるのは、おとり広告の中でも特に多いケースです。
「うっかり消し忘れていた」「後で削除する予定だった」などの場合も、おとり広告に該当します。また、サイトの管理不足などによって成約済みの物件が掲載されたままになっているケースも同様です。
広告の削除にやむを得ないタイムラグがあったとしても、取引できない物件を相当期間にわたり継続して掲載している場合は、原則としておとり広告と判断されます。
取引する意思がない物件を掲載した場合
実在する物件であっても、不動産会社側に取引する意思がなく、集客目的で物件を掲載している場合はおとり広告に該当します。
典型的なパターンとしては、条件の良い目玉物件を掲載し、実際に問い合わせがあると「その物件は売り切れました」などと説明して、他物件の案内へと誘導するケースがあります。
こうしたケースも、おとり広告としてその後の企業経営に重大なリスクをもたらすため、決して行ってはなりません。
不動産業界でおとり広告が発生しやすい3つの原因
厳しい規制があるにもかかわらず不動産業界でおとり広告が発生しやすい原因について、3つ解説します。
広告の削除漏れが起こりやすい環境
不動産広告は、複数の不動産ポータルサイトに掲載することが一般的です。
しかし、人手不足の傾向が強い不動産業界では、営業担当者が広告の管理を兼務することが多く、広告の「削除忘れ」が発生しやすいです。
また、ポータルサイトとの情報連携を行っていても、「情報の更新は1日1回夜間に行われる」などのサイトごとの仕様から、即座に一括削除ができないケースもあります。
不動産業界では、こうしたヒューマンエラーやシステム上のタイムラグによって、意図せずおとり広告が発生してしまう場合があるのです。
社内外における情報共有の不備
物件の成約情報について、社内外での共有が不十分であることもおとり広告が発生する原因となります。
特に、営業担当者が成約情報を社内の広報担当者や責任者へ適切に報告していない場合、おとり広告が発生しやすいです。また、Webサイトの運用を外部の広告業者に委託している場合は、成約情報が広告業者に伝わるまでにタイムラグが生じることがあります。
こうした背景から、成約済み物件の広告削除は後手に回り、おとり広告が発生しやすいのです。
不動産業界の激しい競争環境
不動産業界は成果報酬型のビジネスであるため、同業他社間や社内での顧客獲得競争が激しい業界です。
レインズ(REINS)などの不動産流通の仕組みが発展した現在では、1つの物件を複数の不動産会社が扱えるため、「自社しか扱えない特別な物件」は少数です。そのため、限られた予算内で高い集客効果を得るには、魅力的な物件を掲載することが必要です。
このような競争環境が原因で、禁止されているにもかかわらず、集客を優先しておとり広告を掲載する事例もあります。
おとり広告の防止策3選
おとり広告に違反した場合は顧客の信頼を失うだけでなく、罰則の対象にもなります。以下では、おとり広告を防ぐために不動産会社が取り組むべき対策を3つ解説します。
従業員へのコンプライアンス研修を徹底する
おとり広告が発生する背景には、「売り上げの方が大切」「大きな問題ではない」などの意識が根付いているケースが多いため、以下のような従業員へのコンプライアンス研修が欠かせません。
・景品表示法や宅地建物取引業法の周知
・おとり広告に該当するケースの周知
・おとり広告に対する罰則や行政処分の実例の周知
おとり広告は顧客の信頼を失うだけでなく、会社や個人が重大な罰則を受けるリスクがあるという意識を持つことが大切です。
広告に関する社内ルールを明確化する
おとり広告の防止を従業員個人の意識に依存するのは限界があるため、社内でも以下のように広告ルールを明確化しましょう。
・禁止されている広告表現のリストアップ
・広告内容や募集状況についてのダブルチェック体制の構築
・成約があった際の報告手順の明確化
広告のルールを明確にすることは、担当者ごとの広告表現のばらつきの防止や業務効率化にもつながります。
ITツールの導入を検討する
昨今では、不動産業界の業務効率化を支援するさまざまなITツールが登場しています。
中でも、社内の物件情報を一元管理してポータルサイトへ自動的に反映させるシステムや、広告表現の自動チェックシステムなどは、おとり広告の予防に有効です。
ただし、おとり広告の予防にどのようなITツールを導入すべきかについては、会社の規模や業務内容によって異なります。そのため、不動産業界に強い広告代理店などに相談して、自社に最適なシステムを構築しましょう。
まとめ
おとり広告は、広告の削除漏れや社内外の情報共有の不備などによって、意図せず発生してしまうケースがあります。
しかし、不動産業界ではおとり広告が特に厳しく規制されており、違反と判断された場合は罰金や拘禁刑などの刑事罰、営業停止処分などの行政処分を受ける可能性があります。
そのため、社内ではコンプライアンス研修の実施や不動産広告のルールの明確化に努めるとともに、ITツールの導入などによっておとり広告の防止対策を行うことが大切です。