不動産広告のリスク対策|違反しないための規制知識と実務ポイント

不動産広告のリスク対策|違反しないための規制知識と実務ポイント
SHINWA'S PICKS編集部

不動産広告は集客に欠かせない重要な手段ですが、厳しい規制と見過ごせないリスクも伴います。なにげない広告表現が、意図せず業務停止処分といった深刻な事態を招いてしまうかもしれません。

本記事では、「不動産広告のリスク」をテーマに、宅地建物取引業法(宅建業法)や不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)などの法令知識から、具体的な違反事例、すぐに実践できる対策ポイントまで詳しく解説していきます。

1.不動産広告に潜む3つの重大リスク

不動産広告には、注意を怠ると事業の存続すら危うくする重大なリスクが潜んでいます。ここでは、特に注意すべき「行政処分」「訴訟」「炎上」という3つのリスクについて、具体的に解説します。

行政処分や業務停止処分を受けるリスク

不動産広告は、宅地建物取引業法(宅建業法)や不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)、不動産の公正競争規約といった厳格な規制・ルールが定められています。

これらの規制に違反した場合、監督官庁から措置命令や課徴金の納付を命じられるだけでなく、悪質なケースでは業務停止処分や免許取り消しといった重い行政処分が下される可能性があります。

こうした処分は企業の信頼性を失墜させ、事業の存続を脅かす重大なリスクです。

顧客クレームや訴訟に発展するリスク

不動産は顧客にとって人生を左右しかねない高額な買い物です。そのため、広告の表示と実態がわずかでも異なれば、顧客の信用を失い、重大なクレームに発展しやすくなります。

問題はクレームにとどまりません。誤解を招く表現や不正確な情報が原因で契約に至った場合、契約不適合などを理由とした損害賠償請求訴訟に発展するケースも少なくありません。他業界では許容範囲とみなされがちな誇張表現も、不動産取引では顧客の経済的損失に直結しうるため、訴訟リスクが高まる傾向にあります。

Web広告特有の拡散・炎上リスク

SNSやWeb広告は、紙媒体とは比較にならないスピードと範囲で情報が拡散します。不適切な表現や誤った情報が含まれていると、またたく間に「炎上」し、企業のブランドイメージを著しく損なうおそれがあります。

一度インターネット上に拡散した情報は完全に削除することが困難で、「デジタルタトゥー」として半永久的に残ります。これは企業の信頼性を長期にわたって傷つけ、顧客離れや採用活動への悪影響など、事業全体に及ぶリスクにつながります。

2.不動産広告で注意すべき規制・ルール

不動産広告は、顧客の利益を守るための法律や不動産業界の規約・ルールで厳しく規制されています。これらを理解しないまま広告を出すと、意図せず違反につながるため注意が必要です。

ここでは、広告担当者が押さえておくべき代表的な法律や規約・ルールを、あわせて3つ解説します。

宅地建物取引業法(宅建業法)

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)は、不動産取引の公正性を保ち、顧客の利益を守ることを目的とした法律です。

宅建業法では広告を開始できる時期が制限されており、開発許可や建築確認を受ける前の宅地や建物の広告は原則として禁止されています。また、「おとり広告」と呼ばれる、実在しない物件や成約済み物件を掲載して顧客を誘い込む行為も固く禁じられています。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)

不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)は、実際の商品やサービスよりも著しく優良または有利であると顧客に誤認させるような表示を防ぐための法律です。

不動産広告では、根拠なく「絶対安心」や「最高品質」といった表示をすることは「優良誤認表示」に、また実態のない「今だけ特別価格」といった表示をすることは「有利誤認表示」に該当するおそれがあり、問題となります。

違反が認定されると、措置命令や課徴金に加え、行政による公表で企業の信用を損なうおそれがあります。

不動産の公正競争規約

不動産の公正競争規約は、景品表示法に基づき、不動産業界が広告を適正に運用するために設けた自主的な規約・ルールです。

例えば、徒歩による所要時間は、道路距離80mにつき1分で計算し、1分未満の端数は切り上げて1分として表示するよう定められています。「徒歩5分」と記載して実際に7分かかる場合は、規約違反となる可能性があります。

また、「日本一」「最高」といった最上級の表現や、「完全」「完璧」などの断定的な表現は「特定用語」とされ、使用するには客観的な裏付けが求められます。安易に用いると不当表示と判断されるおそれがあるため、原則として使用は避けるべきでしょう。

3.不動産広告で起こりやすい広告トラブルの事例

法令や規約・ルールを理解していても、実際の広告制作では思わぬ落とし穴があります。

ここでは、不動産広告における代表的な3つのトラブル事例とその注意点を解説します。

表示内容と実態の不一致

広告で注意が必要なのが、表示内容と実際の条件が異なるケースです。

例えば、「駅徒歩5分」と表示されていても実際はそれ以上かかる場合や、「先着順で受付中」とうたいながら既に契約済みである場合などがこれにあたります。

このように、実際には取引できない物件を広告に掲載することは「おとり広告」とみなされ、景品表示法違反となるおそれがあります。

また、CG(コンピューターグラフィックス)の完成予想図やAIが生成した画像を用いる際は、「これは完成予想図です」といった注記が不可欠です。注記がない場合、実際よりも著しく優良であると誤解させる「優良誤認表示」に該当するおそれがあります。

将来の価値を断定する表現

不動産広告において、将来の資産価値を断定的に表現することは認められていません。

例えば、「値上がり確実」「必ず資産価値が向上する」といった、将来の価値を保証するような表現は避ける必要があります。不動産の価格は経済状況や需要と供給のバランスによって変動するため、断定的な記載は優良誤認表示につながりかねません。

こうした表現は、景品表示法上の優良誤認表示や、宅建業法で禁じられる誇大広告に該当する可能性があります。高額な資産である不動産取引では、特に厳しい基準で判断される傾向にあるのです。

将来性について触れる場合は、「近隣では市の再開発計画が進行中です」「公的な調査によれば、当地域の人口は増加傾向にあります」のように、客観的な事実や公表された資料を示すにとどめることが重要です。

SNSにおけるステルスマーケティング問題

2023年10月1日から景品表示法の禁止行為にステルスマーケティングが指定され、広告であることを明示しないSNS投稿は不当表示とみなされます。

インフルエンサーに物件の紹介を依頼する際は、「#PR」「#広告」「提供」などの表記を、顧客がひと目で広告だと分かるよう投稿の冒頭(ファーストビュー)など目立つ位置に表示することが不可欠です。表示が不適切だった場合の法的な責任は原則として広告主である事業者が負うことになりますが、投稿の実態や事業者の関与によっては「事業者の表示」と判断されるケースがある点にも留意してください。

さらに、GoogleやMeta社などのプラットフォームは、独自の広告ポリシーを設けています。特に住宅広告では、差別的な扱いを防ぐ目的で、年齢・性別・郵便番号といった一部のターゲティングが制限されている場合があります。意図せず規約違反とならないよう、媒体ごとの審査基準にも注意が必要です。

4.不動産広告のリスクを防ぐ実務ポイント

これまで見てきたようなリスクを避けるためには、日々の業務の中でどのような点に注意すればよいのでしょうか。

ここでは、広告担当者がすぐに実践できる3つの実務ポイントを解説します。

正確な情報更新体制の構築

広告の信頼性を守るためには、販売状況や価格の変更などを速やかに反映することが重要です。特に成約済みの物件を掲載し続けると「おとり広告」とみなされるおそれがあります。

法令や規約・ルールで「24時間以内」のように具体的な時間が定められているわけではありませんが、取引状況の変更は速やかに広告へ反映させる必要があります。実務上は、成約後ただちに、遅くとも翌営業日までには掲載を停止・更新する体制を整えることが望ましいでしょう。

現場の営業担当者と広告担当者の情報共有を密にし、自動更新システムやチェックフローを整備することがリスク回避につながります。

法令に基づいた表現チェック

広告を出稿する前の表現チェックは、違反を防ぐうえで非常に重要なプロセスです。宅建業法、景品表示法、公正競争規約に照らして、禁止用語や断定的な表現が含まれていないかを確認する必要があります。

チェックリストを活用し、担当者による一次確認と、法務部門や責任者による二次確認といったダブルチェック体制を構築することで、人為的なミスを減らすことにつながります。

また、専門性の高い外部パートナーとの連携も有効です。不動産広告に詳しい法律事務所や、業界の規制に精通した広告代理店などに最終確認を依頼することは、客観的な視点を取り入れ、リスクを最小限に抑えるうえで有効な手段です。

広告とLP(ランディングページ)の整合性

Web広告で「今だけ特典あり」と記載しているにもかかわらず、リンク先のLP(ランディングページ)にその説明がなければ、顧客は不信感を抱きかねません。このような情報の不一致は、クレームや信用の低下につながるおそれがあります。広告でうたう内容とLPの情報は、必ず一致させることが重要です。

さらに、万一トラブルが発生した場合に備え、掲載内容の修正や謝罪などを迅速に行える社内対応フローを事前に決めておくと、ブランドイメージを損なうリスクを抑えることができます。

5.まとめ

不動産広告は集客に欠かせない効果的な手段ですが、宅建業法や景品表示法などの法律や規約・ルールに違反すると、行政処分や訴訟、信用の失墜といった深刻なリスクを招くおそれがあります。

適正な広告運用の基本は、これらの規制を正しく理解し、正確な情報に基づいて表現することです。そのうえで、社内の情報更新体制やダブルチェックの仕組みを構築することが、リスク回避のカギとなります。もし判断に迷う場合は、不動産広告に詳しい専門家へ相談することも有効な選択肢の一つです。

コンプライアンスを徹底し、顧客からの信頼を獲得することが、持続的な広告効果につながるといえるでしょう。