住宅の販売促進を成功させる施策について|販売促進の基本から詳しく解説

住宅の販売促進を成功させる施策について|販売促進の基本から詳しく解説
SHINWA'S PICKS編集部

住宅販売における「販売促進」とは、「顧客が自社の住宅を見つけ、興味を持ち、最終的に購入を決め、その後好評を得る」といった一連のコミュニケーション活動すべてを包括した、戦略的で幅広い活動を指します。販売促進を成功させるためには、これら各段階における課題を一つひとつ丁寧に解決していくことが大切です。

また近年、住宅の販売促進は、顧客のライフスタイルの多様化に応じて、さまざまな施策を組み合わせることが求められます。

本記事では、販売促進の基本を踏まえ、顧客に合わせて施策をどのように組み合わせるべきかを解説します。

1.住宅の販売促進に必要な3つの基本

住宅の販売促進は、単に商品を売り込む「営業活動」や、不特定多数に知らせる「広告活動」だけにとどまりません。顧客の行動過程を把握し、それぞれに存在する顧客心理に寄り添って適切に後押しすることが求められます。

ここでは、そのために必要な3つの基本について確認します。

1-1.詳細な目標設定

住宅の販売促進には、詳細な目標設定が必須です。

最終目標である成約と好評を得るに至るまでには、下記のような項目を達成しなければなりません。

  1. 認知度の向上:まずは会社の名前やブランドを知ってもらう。
  2. 見込み顧客の獲得:自社の住宅に少しでも興味がある顧客の連絡先を集める。
  3. 関係性の構築:顧客との信頼関係を深め、不安や疑問を解消する。
  4. 成約率の向上:最終的な購入の決断を後押しする。
  5. 顧客満足度の向上:購入後も満足していただき、良い口コミや紹介受注につなげる。

担当者はこれらを具体的な数値目標として設定し、方針を打ち出す必要があります。理想として、例えば「来期中にWebサイト経由の資料請求数を月平均30件から50件に増やす」のように、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)な目標を設定するように意識しましょう。

1-2.顧客心理の理解(カスタマージャーニー)

住宅の販売促進を効果的に行うためには、顧客の視点に立つことが不可欠です。顧客の多くは、ある日突然住宅の購入を決断するわけではなく、下記のような過程を経ると考えられます。この一連の心理・行動過程(カスタマージャーニー)を把握し、各段階に応じた施策を展開することが重要です。

①家の購入に興味を持つ:なんとなく「家が欲しい」と考え始めている。まだ具体的なイメージはなく、さまざまな住宅メーカーの広告やSNSの投稿をぼんやりと眺めている。

②家の比較検討を始める:自分の理想の暮らしや予算を考え、複数の住宅メーカーを比較検討し始める。Webサイトで施工事例を見たり、資料請求をしたりして、積極的に情報を集めようとする。

③家を実際に見て話を聞く:候補を数社に絞り込み、モデルハウスや完成見学会に足を運んで「実物」を確かめようとする。デザインだけでなく、家の性能やスタッフの対応なども含めて総合的に判断しようと考える。

④家の購入を決断する:住宅メーカーと家を選定し、最終的な決断を下す。プランや資金計画の最終確認を行い、契約へと進む。

⑤購入後の評価をする:新しい家での生活が始まり、住み心地などが分かってくる。評価が良いと友人や知人に自慢したくなる。

1-3.施策の実行と継続的な改善

住宅の販売促進において最も重要なことは、設定した目標を達成するための施策の実施と、継続的な改善です。

設定した各目標には、それぞれターゲットとなる顧客層が存在します。そのため下記のように、目標ごとの顧客層に合った施策の実施と改善を続けることで、目標の達成は現実的なものになります。担当者は常に下記を基本として意識しましょう。

  • 認知度の向上:ターゲットは家に興味を持ち始めたばかりの顧客層。顧客層に認知されるために、Web広告、SNS(Instagram、YouTubeなど)、テレビCM、交通広告、住宅情報誌への掲載を行う。内容は夢や憧れを抱かせるようなものを目指し、顧客層の反応をデータで確認しつつ日々改善する。
  • 見込み顧客の獲得:ターゲットは積極的に情報収集をする顧客層。顧客層を育成するため、自社サイト(施工事例、お客様の声)の充実、詳しいパンフレットやコンセプトブックの送付、オウンドメディアでの情報発信、オンラインセミナーの開催などを行う。内容は自社の強みやこだわりを具体的に伝え、他社との違いを明確にする。情報は常に最新の状態を保つ。
  • 関係性の構築:ターゲットは実物を確かめる顧客層。顧客層との信頼関係を築くために、完成見学会、モデルハウスでの宿泊体験イベント、構造見学会、個別相談会などを実施する。顧客層の不安や疑問には丁寧に答える。
  • 成約率の向上:ターゲットは購入を決断しようとしている顧客層。顧客層の購入を後押しするために、詳細な見積もり・プラン提案、資金計画シミュレーション、期間限定のキャンペーン(オプションプレゼントなど)の提示などを行う。顧客層の最後の不安を取り除くよう、各媒体で一貫した情報提供と丁寧なコミュニケーションを行うよう徹底する。
  • 顧客満足度の向上:ターゲットは購入後の顧客層。顧客層から好評を得るために、定期点検、アンケート、購入者限定イベント(感謝祭など)、紹介キャンペーンの案内などを行う。長期的な顧客満足を提供しつつ、意見などを取り入れ各施策のさらなる改善を目指す。

2.住宅の販売促進の現在|アナログ施策の見直し

住宅の販売促進を効果的に行うには、時代背景を考えることも必要です。

現在、住宅業界では、デジタル化が進む一方で、アナログ施策の価値が見直されています。誰もがWeb上でつながれる現在だからこそ、あえて手間とコストをかけた手触りのあるアプローチが顧客の心に深く響き、競合他社との大きな差別化につながるでしょう。

2-1.情報過多が引き起こす情報疲れ

日々大量のWeb広告やメールマガジンに接している顧客は、いわば「情報疲れ」の状態にあります。情報疲れを起こしている顧客は、一方的に送られてくる情報に対して、多くの場合「読むのが手間である」と感じ、読まずに流してしまいがちです。

一方で、企業がコストと手間をかけたことが伝わる「形があるもの」、例えば丁寧に作られたパンフレットやDM(ダイレクトメール)は、「自分に向けられた情報」として情報の信頼性があると判断される可能性が高く、開封率が高まる傾向があります。実際に一般社団法人日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2024」によると、本人宛てDMの閲読率は74.1%と、高い数値となっています。

高額な買い物である住宅購入の検討において、この初期段階での「信頼感」の獲得はその後の関係性の構築に関わるため、極めて重要だといえます。

2-2.デジタル媒体とアナログ媒体を行き来する情報収集スタイル

顧客は、デジタル媒体とアナログ媒体の情報を行き来しながら検討を進めています。

スマートフォンの普及により、顧客は例えば通勤中にSNSで施工事例を眺め、昼休みには企業のWebサイトで性能を比較し、帰宅後にタブレットで口コミをチェックするなど、時間や場所を選ばずに情報収集ができるようになりました。

しかし、住宅は人生で最も高額な買い物の一つです。近年は金利が上昇したこともあり、より慎重になった顧客の「実物を見たい」「素材を確かめたい」「担当者と直接話したい」といった欲求が高まっていると考えられます。

「Instagramの広告で見たデザインが気に入り、工務店のWebサイトで他の施工事例を閲覧。その後、より詳しい情報が欲しくて資料請求を行い、郵送されたパンフレットを見ながら家族で検討。そして週末、満を持してモデルハウスへ足を運ぶ」といった過程を経ることが想定されるため、過程ごとに存在するアナログ媒体の重要性は高まっているといえるでしょう。

2-3.記憶に残りやすい五感演出

形として手元に残るアナログ媒体は、Webサイトのようにブラウザを閉じたら消えてしまう情報よりも記憶に残りやすいという大きなメリットがあります。

Webサイトの情報がどんなに有益だとしても、ブラウザを閉じれば簡単に視界から消えてしまいます。しかし、デザイン性の高いコンセプトブックやパンフレットは、すぐに捨てられずに、例えばリビングのテーブルや本棚に置かれ、顧客の目に触れる時間が増える可能性があります。

また、紙の質感やページをめくる感触は、デジタルでは得られません。無機質なデジタル媒体との差別化を図ることができるため、企業名やブランドイメージを顧客の記憶に残しやすく、見込み顧客を育てる第一歩として最適だと考えられます。

2-4.届けたい顧客層へ確実に情報が届く

アナログ施策は、届けたいエリアや顧客層へ確実に情報を届ける性質を持っています。

Web広告などのデジタル媒体はアルゴリズムに依存するため、必ずしも狙った顧客に100%表示されるとは限りません。一方、チラシやDMといったアナログ媒体であれば、一度手元に届けば、捨てられない限り、家族の目に触れる機会が持続します。

また、インターネットをあまり利用しない高齢層など、デジタル媒体だけではアプローチが難しい顧客層も存在します。

そういった場合でも、チラシやDMであれば「〇〇区限定」のような形で配布が可能であり、そのエリアで家探しをする顧客層に高い確率で情報を届けることが可能です。

この「情報を確実に届け、手元に残す力」は、デジタル媒体にはない大きな強みです。

3.デジタル施策とアナログ施策を統合する「オムニチャネルアプローチ」

ただし、単にアナログ施策を個別に行うだけでは十分な効果は期待できません。効果を最大化するために、デジタル施策を含む各施策と連携させ、顧客にあらゆる接点(チャネル)で一貫した体験を提供する「オムニチャネルアプローチ」という考え方を取り入れてみましょう。

オムニチャネルとは、マルチチャネル(各チャネルが独立)やクロスチャネル(チャネル間で送客)から一歩進み、すべての顧客接点(チャネル)をシームレスに連携させ、一貫した購買体験を提供することを目指した戦略です。

ここでは、オムチャネルの取り入れ方とメリットについて解説します。

3-1.ブランドイメージの一貫性が成約率を高める

行動過程にデジタル媒体の情報とアナログ媒体の情報が混在した顧客との成約率を高めるには、自社サイト、SNS、チラシ、住宅展示場の担当者など、顧客とのあらゆる接点で、企業が提供する情報やブランドイメージに一貫性を持たせることが重要です。

仮に、WebサイトやSNSで伝えられた情報と、住宅展示場で伝えられた情報が異なっていた場合、顧客は「この会社が伝えていることはどちらが本当だろうか?」と混乱し、不信感を抱いてしまいます。

各チャネルでその事態を防ぎ、顧客との信頼関係を丁寧に築いてこそ、競合他社ではなく「この会社から買いたい」という最終的な決断を後押しし、また最終的には成約率を高めることもできるでしょう。

3-2.データの統合管理が顧客との関係を深める

各チャネルを連携させ、顧客データを統合管理するためには、CRM(顧客関係管理)やCDP(顧客データプラットフォーム)といったシステムの活用が有効です。これにより、顧客一人ひとりの興味関心に寄り添った提案がしやすくなります。

住宅展示場の担当者が、Webサイト上の顧客の閲覧履歴を把握していた場合を考えてみましょう。来場した顧客に対して、あらかじめ顧客の求めるものを理解していれば「平屋にご興味がおありですか?こちらのモデルがお客様のイメージに近いかもしれません」と自然な案内ができるはずです。

それによって顧客との質の高いコミュニケーションを実現できれば、顧客満足度は高まります。成約後の紹介受注などにもつながるでしょう。

4.オムニチャネル化の効果を高めるアイデア5選

オムニチャネル化の効果を高めるには、「部門・会社間の連携」「各チャネルのデータを統合管理するシステムの整備」「各施策の効果検証方法の検討」などの徹底に加え、顧客の情報や購買行動を理解して販売促進を計画することが極めて重要です。

ここでは例として、デジタル媒体とアナログ媒体の強みを掛け合わせ、効果を最大化させるための具体的なアイデアを5つ厳選してご紹介します。

4-1.チラシ・DMと二次元コード

チラシやDMに「Web限定ルームツアー動画はこちら」といった魅力的なコピーとともに二次元コードを掲載してみましょう。顧客の「知りたい」という気持ちを逃さず、スムーズにデジタル情報へ導くことができれば、ただURLを載せるよりもアクセス率が格段に向上するはずです。

また、「どの媒体からの流入が多いか」などの効果測定も可能になるため、データに基づいた施策の効果的な改善が期待できます。

4-2.見学会と来場者限定オンラインコミュニティ

来場した顧客に感謝を伝え、「来場者様限定のLINEオープンチャット」などへ招待してみましょう。

そこで家づくりの進捗や、ちょっとした豆知識を共有できると、クローズドな環境が特別感を生み、継続的な関係性の構築につながることが期待できます。

4-3.Web広告・SNSと「ひと手間」加えた資料請求

Web広告やSNSで広く認知させ、資料請求をしてくれた顧客には、単に資料を送るだけでなく、担当者からの手書きのメッセージカードを一枚添えてみましょう。

豪華なパンフレットを作る予算がなくても、この「ひと手間」がデジタルにはない温かみと誠実さとして伝わり、競合他社との強力な差別化になり得ます。

4-4.オウンドメディアの記事と関連資料の郵送

「住宅の断熱性能」といった専門記事を読んだ顧客は、そのテーマへの関心が非常に高い層だと考えられます。当該記事の最後に「詳細が分かる『高性能断熱まる分かりブック』をお送りします」といったCTA(コールトゥアクション・行動喚起)を設置してみましょう。

能動的に資料請求してくれた購買意欲の高い顧客を特定し、優先的にアプローチできます。

4-5.Googleビジネスプロフィールと地域密着イベントの連携

「〇〇市工務店」など、具体的な名前を検索した顧客は非常に有望です。Googleビジネスプロフィールの「投稿」機能を使い、「今週末、お子様向け木工教室を開催!」といった地域密着イベントを告知してみましょう。

Web上での発見が現実の接点と直接結びつき、見込み顧客との自然な出会いが創出できるでしょう。

5.これからの住宅の販売促進で必須となる2つの視点

5年後、10年後も顧客に選ばれ続ける企業であるためには、現在だけでなく、将来を見据えることが不可欠です。

ここでは、持続的な成長のために今から意識すべき2つの重要な視点を解説します。

5-1.デジタルネイティブ世代に響く「体験価値」の提供

物心ついた頃からインターネットやSNSが身近にあったデジタルネイティブ世代にアプローチするためには、彼ら彼女らが日常的に利用するプラットフォームを通じ、家づくりそのものを楽しむ「体験価値」を提供することが極めて重要になります。

具体的には、InstagramやTikTokでのショート動画、VR(仮想現実)技術を活用したオンライン内見、AR(拡張現実)による家具の試し置きシミュレーションなど、ゲーム感覚で家づくりそのものを楽しむ「体験価値」の提供が有効でしょう。また、完成した家だけでなく、家づくりの過程や、そこで暮らす施主のライフスタイルに焦点を当てたインタビュー動画など、「自分ごと」として捉えてもらいやすく、共感を生む可能性が高いものは、積極的に検討しましょう。

5-2.AIやMAツールの活用

AIチャットボットやMA(マーケティングオートメーション)ツールといった最新技術の動向は、常に注視しましょう。もし導入できれば、顧客対応の効率化と、一人ひとりに最適化されたきめ細やかなコミュニケーションを両立させることが可能になります。

ハードルが高いと感じる場合は、まずは見込み顧客リストを管理することから始めてみましょう。「資料請求日」「来場日」「興味のある家のテイスト」などを記録していくだけでも、顧客への理解度は格段に深まります。その上で、Webサイトに無料から始められるAIチャットボットを設置して定型的な質問に自動応答させるなど、小さな成功体験を積み重ねていくことができれば、将来の本格的な導入につながるはずです。

6.まとめ

住宅の販売促進を成功させるには、「詳細な目標設定」「顧客心理の理解」「施策の実施と継続的な改善」などの基本を押さえつつ、時代背景に合わせ、さまざまな施策を組み合わせていくことが重要です。

顧客はデジタル媒体とアナログ媒体の情報を行き来することが多いと考えられます。そのため、デジタル施策とアナログ施策を連携させると、より効果が期待できます。

また、将来を見据えるのであれば、デジタルネイティブ世代へのアプローチや、最新技術の導入は常に意識しておくと良いでしょう。

本記事で解説した内容を参考に、今後の戦略を検討してみてください。