不動産広告における肖像権とは?トラブルを防ぐ方法やクレームの対処法を解説

不動産広告における肖像権とは?トラブルを防ぐ方法やクレームの対処法を解説
SHINWA'S PICKS編集部

不動産広告において魅力的な画像は不可欠ですが、その撮影には肖像権への配慮が求められます。通行人などが意図せず写り込むと、企業の信頼を損なうクレームやトラブルに発展するおそれがあります。

本記事では、不動産広告における肖像権の基本から、トラブルを未然に防ぐ撮影・チェック方法、万が一クレームが来た際の具体的な対処法までを分かりやすく解説します。

1.不動産広告における肖像権とは?

不動産広告で注意すべき肖像権とは、具体的にどのような権利なのでしょうか。

ここでは、肖像権の基本的な意味から、不動産広告で問題になりやすい事例、そして権利侵害と判断される基準について詳しく解説します。

1-1.肖像権とは

肖像権とは、自己の容姿などを無断で撮影・利用(公表、商用利用など)されないための権利です。これには、プライバシーを守る人格権としての側面と、著名人などの肖像が持つ経済的価値を守る財産権(パブリシティ権)としての側面があります。

この権利は特定の法令で明文化されてはいませんが、日本国憲法第13条の「幸福追求権」を根拠とし、過去の裁判例によって確立されてきました。

そのため、どこからが許容範囲でどこからが権利侵害にあたるのか、その境界線は曖昧です。

不動産広告のような営利目的での利用では、この曖昧さがトラブルのリスクとなるため、個々の事案で慎重な判断が求められます。

1-2.不動産広告で問題となりやすい事例

不動産広告では、肖像権が問題となりやすい具体的な場面がいくつか存在します。最も典型的なのが、物件の外観撮影時に公道を行き交う通行人が写り込んでしまう場合です。

また、室内の撮影においても、窓の外にいる近隣住民や、撮影スタッフ自身が鏡やガラスに意図せず反射して写り込むことがあります。

これらは物件の魅力を伝えるという明確な営利目的でWebサイトや折り込みチラシに掲載され、不特定多数の目に触れます。

営利目的で不特定多数に公開されるため、個人的な記録とは性質が異なり、特に注意が必要です。

1-3.肖像権侵害の判断基準

肖像権侵害が成立するかは、「社会生活上、我慢すべき限度(受忍限度)を超えているか」という観点から、複数の要素を総合的に考慮して判断されます。

不動産広告では特に以下の点がポイントになります。

  • 個人の特定可能性:顔が鮮明か、服装や特徴から個人を特定できるか
  • 撮影場所:公道など公開された場所か、私的な空間か
  • 撮影の目的と態様:営利目的(広告利用)であるか、人物が画像の中心になっているか

個人が特定できないほど小さかったり、後ろ姿で不鮮明だったりする場合は、受忍限度の範囲内と判断される可能性が高いですが、この判断は個々の事案で異なるため、安易な自己判断は禁物です。

2.不動産広告の肖像権トラブルを未然に防ぐ方法

肖像権に関するトラブルは、事前に対策を講じることで未然に防ぐことが可能です。

ここでは、撮影段階での工夫から、広告掲載前のチェック体制の構築、万が一写り込んでしまった場合の画像加工によるリスク回避策まで、具体的な予防法を解説します。

2-1.撮影時に工夫する

肖像権トラブルを根本的に回避するには、撮影段階での配慮が最も重要です。

まず、人通りが少ない平日の日中や早朝を狙って撮影日時を調整することが効果的でしょう。これにより、通行人が写り込むリスクを物理的に低減できます。

また、撮影時には画角に細心の注意を払うべきです。人物がフレームに入りそうな場合は、アングルを調整するか、人が通り過ぎるのを待つといった対応が求められます。

特に、学校の近くや公園に面した物件では、子どもの写り込みに一層の注意が必要です。これらの工夫を徹底することが、後の編集作業やリスクを最小限に抑えるカギとなります。

2-2.掲載前のチェック体制を整える

肖像権トラブルを防ぐには、広告を掲載する前の人的なチェック体制が重要です。

撮影担当者一人の判断に委ねるのではなく、広告掲載の責任者を含む複数人でダブルチェック、トリプルチェックを行うフローを社内で整える必要があります。

その際は、具体的な項目をリスト化したチェックシートを用いると効果的でしょう。

「人物の写り込みはないか」「個人が特定できる情報(表札、洗濯物、特徴的な装飾など)はないか」「自動車等のナンバープレート(プライバシー権の対象)が写り込んでいないか」といった項目を設けることで、確認漏れを効果的に防ぐことができます。

このような体制は、万が一のミスを防ぐだけでなく、企業のコンプライアンス意識を示す上で極めて重要です。

2-3.画像加工でリスクを回避する

万が一、人物の写り込みが避けられなかった場合、画像加工による対応でリスクを回避する必要があります。

最も一般的な方法は、個人が特定できる顔や姿に「ぼかし」や「モザイク」処理を施すことです。これにより、肖像権侵害と判断されるリスクを大幅に低減できます。

ただし、過度な画像加工は物件の魅力を損ない、かえって不自然な印象を与えかねないため、あくまで自然な仕上がりを心がけるべきです。

また、建物周辺の電線を消すなど、実際と異なる状態に見せる加工は不動産広告の規約違反となるおそれがあるため注意しましょう。

画像の端に小さく人物が写り込んでいる場合は、トリミング(切り抜き)で該当箇所をカットすることも有効な手段の一つです。

3.肖像権に関するクレームが来た時の対処法

どれだけ注意していても、肖像権に関するクレームが寄せられる可能性はゼロではありません。万が一の事態に備えることが重要です。

ここでは、クレームが来た際の初期対応から、問題を悪化させないための注意点、専門家への相談まで、具体的な対処法を解説します。

3-1.誠実かつ迅速な対応をする

肖像権に関するクレームが来た場合、その初期対応の質が、その後の交渉を大きく左右します。

重要なのは、誠実な姿勢で迅速に行動することです。まずは相手の主張を傾聴し、状況の悪化を避けるための姿勢を示すことが求められます。

一方的な反論や弁解は、円滑な解決を妨げる要因となるため避けるべきです。

3-2.クレーム内容を正確に把握する

初期対応と並行して、クレーム内容を客観的かつ正確に把握する作業が不可欠です。

どの広告媒体のどの画像に、誰がどのように写っているのか、具体的な事実を確認し記録します。この情報が、迅速かつ的確な是正措置の土台となるからです。

例えば、Webサイトであれば該当ページのURLを確認し、折り込みチラシであればどの物件のものかを特定します。

この事実確認に基づき、迅速に広告物を非公開・削除することが、問題の早期鎮静化を図る上で有効な手段となります。

3-3.自己判断での反論は避ける

クレーム対応において最も避けるべきは、法的根拠の不確かな自己判断で「権利侵害にはあたらない」と一方的に反論することです。

このような対応は、相手の感情を害し、法的な紛争へと発展させるリスクを高めます。

たとえ自社に正当性があると考えられる場合でも、初期対応で対立的な姿勢を示すことは、その後の円滑な交渉を著しく困難にします。

まずは相手の主張を傾聴し、冷静に対応することが、無用なトラブルを回避する上で重要です。

3-4.弁護士に相談する

当事者間での解決が難しく、損害賠償請求など法的な紛争に発展する可能性がある場合は、自己判断での対応は大きなリスクを伴います。

このような状況では、速やかに弁護士に相談することが不可欠です。特に、企業のインターネット上のトラブルや知的財産権(肖像権を含む)に詳しい弁護士に相談することで、法的な観点から状況を客観的に分析し、交渉や訴訟を見据えた適切な対応方針を得られるでしょう。

自社だけで解決しようとせず、早い段階で専門家の知見を仰ぐことが、問題を適切に解決するための確実な道筋となります。

4.まとめ

不動産広告における肖像権への配慮は、企業の信頼を守る上で不可欠です。

トラブルを未然に防ぐには、撮影時の工夫から掲載前のチェック体制まで、予防策を徹底することが重要です。

予防策を講じるとともに、万が一クレームが来た際は、誠実かつ迅速に対応することを心がけましょう。

また肖像権の正しい知識を身につけ、コンプライアンスを遵守することで、安全で効果的な広告活動を成功に導きましょう。