マンションの予告広告における注意点とは?出稿前に確認すべきポイント

予告広告とは、分譲マンションや新築住宅、宅地などの販売価格や条件がまだ確定していない段階で物件情報を事前に告知する広告のことです。
予告広告はあくまで「本広告」の前段階として位置付けられており、この時点では売買や予約申し込みはできません。また、出稿にあたっては法令に基づいたクリエイティブの管理が求められます。
本記事では、予告広告の目的や本広告との違い、そして出稿時に押さえておくべき注意点について詳しく解説します。
1.予告広告が活用される理由
不動産業界で予告広告が用いられることが多い主な理由は、早い段階で資金を回収するため、そして市場の反応を見ながら販売戦略を練る材料とするためです。
特に大規模分譲マンションや新築分譲住宅などの開発では、着工前や建設途中の段階で一定数の反響を得られるかどうかが、プロジェクト全体の採算性に大きく影響します。そのため、販売前から広告を打ち出し、顧客の関心度やニーズを把握することは、リスクを最小限に抑え、効果的な価格設定や販売開始時期の調整を行うための重要な判断材料となります。
また、販売開始と同時にスムーズな申し込みにつながりやすくなり、結果として全体の資金回収スピードも早まる傾向にあります。
買い手側のメリットも
予告広告は買い手の視点から見ても、条件の良い物件情報を早期に把握して余裕を持って資金計画や住宅ローン審査の準備を進められるというメリットがあります。
販売価格帯の目安が掲載されている場合は、他の物件との比較検討がしやすくなるのも大きなポイントです。
2.予告広告と本広告の違い
不動産広告には、物件情報を早期に伝える「予告広告」と、正式な販売情報を告知する「本広告」があります。この二つの違いを正しく理解していないと、販売タイミングを逃したり規約等に違反したりする恐れもありますので、しっかりと整理しておきましょう。
広告の目的
予告広告は、販売価格や条件がまだ確定していない段階で、物件の取引開始予定時期などを事前に知らせるのが目的です。
一方で本広告は販売価格や契約条件がすべて確定した上で行われる正式な販売告知であり、この段階でようやく購入申し込みが可能になります。
掲載可能な情報
予告広告では、価格や賃料は「未定」あるいは「予定最低価格(賃料)、予定最高価格(賃料)、予定最多価格帯」として表示されるため、あくまで参考情報の扱いになります。
これに対して本広告では買い手が具体的な判断を下すための情報を掲載する必要があり、確定した販売価格や契約条件を明示することが義務付けられています。
契約・申し込みの可否
予告広告の段階では買い手からの申し込みや契約締結は一切認められません。申し込み順位の確保や抽選への事前登録なども不可となっています。
正式な申し込みを受け付けるのは本広告の掲載以降です。
3.予告広告を出稿する際の注意点
予告広告は本広告と異なる扱いが求められるため、掲載方法を誤るとさまざまなリスクが生じます。ここでは、広告を出稿する際に必ず押さえておきたい注意点を整理しておきましょう。
必要な表示事項を正しく記載する
不動産業界では消費者の誤認を防ぐため、不動産の公正競争規約における「表示規約(不動産の表示に関する公正競争規約)」において細かく表示ルールが定められています。
予告広告については以下の5つの事項を「見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に」記載する必要があります。
1 予告広告である旨
2 価格若しくは賃料(入札・競り売りの方法による場合は、最低売却価格又は最低取引賃料)が未定である旨又は予定最低価格(賃料)、予定最高価格(賃料)及び予定最多価格帯
3 販売予定時期又は取引開始予定時期
4 本広告を行い取引を開始するまでは、契約又は予約の申込みに一切応じない旨及び申込みの順位の確保に関する措置を講じない旨
5 予告広告をする時点において、全ての予定販売区画、予定販売戸数又は予定賃貸戸数を一括して販売(取引)するか、又は数期に分けて販売(取引)するかが確定していない場合は、その旨及び当該予告広告以降に行う本広告において販売区画数、販売戸数又は賃貸戸数を明示する旨
引用:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
これらはすべて、消費者が「まだ申し込みできない情報である」ことを誤解なく認識できるようにするためのルールです。違反した場合は注意や警告、違約金課徴の対象となり、企業の信頼性を大きく損ねる可能性があります。
広告出稿にあたっては上記の表示規約を順守するための正確な校閲体制が必要です。
出稿媒体に注意する
表示規約第9条では、予告広告と本広告の媒体についても規定されています。
媒体が変わると、消費者が本広告の情報を追えなくなる可能性があるため、予告広告を出稿した場合は本広告も原則として同一媒体で出稿しなければなりません。例えば新聞の折込チラシで予告広告を利用した場合、本広告も同じく新聞折込チラシとする必要があります。
ただし、2022年の表示規約改正により、インターネット広告のみでも可能とする規定が追加されました。そのため現在は「予告広告と同一媒体」もしくは「インターネット広告」で本広告を出稿すれば問題ありません。
やむを得ず同一媒体・インターネット広告で掲載できない事情がある場合は、予告広告の段階で本広告の掲載予定媒体を明示しておく必要があります。
誤解を招く表現を避ける
予告広告は物件情報の早期提供が目的であり、本広告と誤認されるような文言の使用は避けなければなりません。「新発売」や「申し込み受付中」などの表現はNGです。
また、販売開始時期をあいまいにせず、明確に表記することも重要です。予告広告の特例に加え、不動産広告に共通するこれらのルールも守るようにしましょう。
あわせて読みたい:【一覧表つき】不動産広告で守るべき表示義務を分かりやすく解説
予告広告のみで取引を進めない
先ほども述べましたが、予告広告の段階では契約・予約申し込みの受け付けができません。申し込み順位の確保や抽選参加への事前登録など、取引に直結する行為は行わないようにしましょう。
「予告広告はあくまで参考情報である」という前提をしっかり認識し、問い合わせ対応などでも過剰な期待を与えないよう配慮が必要です。
変更が生じた場合は訂正広告を出す
予告広告で掲載した販売予定価格帯や販売予定戸数などに変更があった場合は、速やかに訂正広告を出す義務があります。例えば、販売予定戸数が減少したにもかかわらず修正を行わないと、消費者を誤認させる恐れがあります。
訂正広告は原則として予告広告と同じ媒体で掲載する必要があります。その他、必要に応じて顧客に直接説明する、物件のホームページに訂正広告を出稿するといった対策を行いましょう。
情報の一貫性を保ち、顧客に正確な内容を伝えることが大切です。
4.まとめ
予告広告は、物件の情報を早期に伝えられる有効な手段であり、集客や販売戦略において重要な役割を果たします。しかし一方で、本広告とは異なる点があり、掲載内容やタイミング、媒体の扱いにおいて細かな規制があるため、広告制作や出稿時には必ず事前に確認しておくことが重要です。
特に、消費者にとって誤認や混乱が生じやすい広告であることを踏まえ、「情報提供」としての役割に徹しつつ、分かりやすく誠実な表現を心がけることが求められます。
本記事でご紹介したポイントを参考に、適切な予告広告運用を行い、スムーズな本広告・販売活動につなげていきましょう。