SNSにおける不動産広告の規制とは?チェックリストで確認

近年、企業でもSNSの活用が一般的になりつつあり、不動産業界でもX(旧Twitter)やInstagramなどを活用してマーケティング戦略を行うケースが年々増加しています。
SNSは無料でアカウント作成ができるのがメリットですが、一方で不動産広告に適用される法規制への認識が甘く、意図せず法律違反となっていないか不安に思う担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産広告における規制を下記のチェックリストで確認し、法令を遵守したSNS運用を心掛けましょう。
1.不動産広告を正しく表示できている?SNS投稿NGチェックリスト
SNSなどのWeb媒体においても紙媒体と同様に不動産広告の法規制が適用されます。
現状、Web媒体の不動産広告で法的な処分を受けた事業者はポータルサイトに掲載しているケースが主で、SNSの運用で摘発された事例は過去にありません。しかしSNSの普及に伴い今後規制が強化される可能性もありますので、SNSの運用時にも十分に注意を払うことをおすすめします。
NGチェックリストで投稿が規約に違反していないか簡易的に確かめてみましょう。
※以下はあくまで簡易的なチェックリストです。正確な判断は各の情報を参照してください。
SNS投稿NGチェックリスト
- 既に契約が決まっている物件を削除せずそのまま掲載している
- 建築確認や開発許可を受ける前の物件を「販売予告」として宣伝している
- 投稿する画像の文字が小さい・つぶれていて読めない
- 取引態様(「売主」、「貸主」、「代理」または「媒介(仲介)」の別)を記載していない
- 所要時間の計算を恣意的に調整して表示している
- 面積を「~坪」などと記載し、メートル法を使わず表示している
- 「3LDK」などの物件の形質を実際とは異なる表示で記載している
- 実際とは異なる写真を掲載している
- 「スーパーからすぐ近く!」などと記載し、距離を明示せず周辺施設の情報を表示する
- 実際の価格よりも高い価格を併記し、値引きしているかのような表示(二重価格表示)をしている
特定用語NGチェックリスト
合理的な根拠を持たず以下の表現を使うのは規約違反となります。
- 「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語
- 「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
- 「特選」、「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語
- 「最高」、「最高級」、「極」、「特級」等、最上級を意味する用語
- 「買得」、「土地値」、「格安」、「激安」、「安値」等、著しく安いという印象を与える用語
- 「完売」等、著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語
※引用元:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会「特定用語の使用基準」
2.不動産広告の法規制①景品表示法
ここからは不動産広告にまつわる法規制の内容について、詳しく解説していきます。
景品表示法は主に大げさな表現で消費者を「不当表示」を禁止する法律です。
違反とみなされると行政指導、悪質な場合は措置命令・課徴金が課されることもあります。処罰の対象となる主な項目について、SNSにおけるNG例とともにご紹介します。
優良誤認表示の禁止
商品やサービスの内容・品質について、実際よりも優良であると示す表示、すなわち優良誤認は禁止されています。
(NG例)物件のエリアとは関係のない都市の写真を合成した画像をSNSで掲載・宣伝する
有利誤認表示の禁止
取引条件(価格)について、実際よりも取引の相手方に著しく有利であると誤認させる表示を有利誤認表示と呼び、法律上禁止されています。上記の優良誤認表示と混やすいので注意しましょう。
(NG例)駐輪場の月額利用料を記載しないで物件情報をSNSで宣伝
おとり広告の禁止
契約済物件や架空物件、取引する意思のない物件を掲載する行為を「おとり広告」と呼びます。
不動産広告でもっとも多い不正がおとり広告であり、特にSNSではおとり広告にあたる行為に気づかず放置されているケースが多いため注意が必要です。
(NG例)契約済の物件情報をSNSに掲載したまま放置する
3.不動産広告の法規制②宅地建物取引業法
宅地建物取引業法(宅建業法)は不動産業界全体で不正取引を防止するための法律です。
違反した場合、指示処分ののち業務停止・宅地建物取引士免許取消処分が下されます。
誇大広告等の禁止
宅建業法においても著しく事実に相違する表示、実際よりも著しく優良であるとを誤認させるような表示「誇大広告」が禁止されています。
禁止の範囲はおおよそ景品表示法における「不当表示」と同じです。
(NG例)最寄り駅からのアクセス15分のところを5分と表記してSNSに掲載
広告の開始時期の制限
宅建業法では、宅地造成前は都市計画法上の許可、建築工事完了前は建築基準法上のなど後に広告を出さなければならないという制限が課されています。
法律上まだ広告を出してはならない時期にSNSで物件情報を信したり、あたかもが下りているかのように宣伝したりする行為は処罰の対象となります。
(NG例)物件に対し別物件の建物外観図や室内写真を掲載宣伝する
取引態様の明示
SNS不動産広告を出す場合、原則として広告主の立ち位置(取引態様)を明示する必要があります。
(NG例)媒介にもかかわらず取引態様を記載せず、媒介報酬が必要ないと誤認させる内容になっている
4.不動産広告の法規制③不動産の公正競争規約
景品表示法に基づき、公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けたで不動産公正取引協議会が自主的に定める規約を「不動産の公正競争規約」と呼びます。この規約に違反した場合は「注意→警告→厳重警告→違約金(初回50万円以下、2回目以降500万円以下)」と徐々に処分が重くなっていきます。
このうち不動産広告において特に気を付けるべきなのは「不動産の表示に関する公正競争規約」いわゆる「表示規約」です。
規約の対象となるのは協議会に加入している不動産業者のみですが、加入していない不動産業者についても公正取引委員会が不当性を判断する際にはこの規約を参照することとなっています。
そのため、表示規約は実質不動産業界全体に適用される規約であるといえます。
必要な表示事項
表示規約ではここまで紹介してきた法規制の内容に沿い、具体的な表示基準などが細かく規定されています。
原則として7ポイント以上の大きさの明瞭な文字で、取引内容に合わせて必要な事項を表示しましょう。
(NG例)SNSで掲載した画像の文字が小さく、何が書いてあるか見えない箇所がある
5.まとめ
不動産広告の規制はSNSにも適用されるため、健全な運用には各種法律・規約への理解が不可欠です。現状SNSの信で処罰の対象となった事例はありませんが、企業のSNS普及率増加に伴って規制が強化される可能性も考えられます。
"SNSだから大丈夫"と思わず、規制に抵触しないような運用を行っていくことが重要です。